活動履歴
全国地方議員交流研修会 2026 in 横浜
女性の貧困・非正規労働・ケア労働を全国の地方議員と議論しました
「働いても報われない。逃げても制度につながらない」
全国地方議員交流研修会で女性の貧困を議論
2026年7月22日|横浜市開港記念会館
2026年7月22日、横浜市開港記念会館で開催された「第22回全国地方議員交流研修会 in 横浜」の翌日、第4分科会「女性の貧困―非正規労働、ケア労働から考える」に参加しました。私は、福岡市議会議員の森あやこさんとともに座長を務め、あわせて、ひとり親家庭の相談事例と政策提言について報告しました。
変えるべきは、困難を抱えている本人ではなく、働き方・社会保障・住宅・教育・給付をつなぐ「制度の接続設計」だということを強調しました。
分科会で共有した問題意識
女性の貧困は、「努力が足りない」「もっと働けばよい」という言葉だけでは解決できません。保育、介護、教育、相談支援など、暮らしに欠かせない仕事ほど、女性が多く、非正規・低賃金で担っている現実があります。
さらに、雇用、社会保障、住宅、学校、給付、子育て支援が別々の制度として動くため、困難が重なった時に支援がつながらないことも大きな課題です。今回の分科会では、研究者、現場の実践者、全国の自治体議員が、それぞれの立場から実態と改善策を持ち寄りました。
1 会計年度任用職員の問題―まず「調べる」ことから
北海学園大学教授の川村雅則先生からは、「あなたが変えられる公務非正規問題」と題して、自治体で働く会計年度任用職員の問題が提起されました。
保育士、図書館司書、学校支援員、相談員、事務職など、毎年継続して必要な仕事を担っているにもかかわらず、原則1年単位の任用、低い賃金、昇給上限、数年ごとの公募など、不安定な条件に置かれている職員が少なくありません。公共サービスを支える人の雇用が不安定であれば、経験や専門性が蓄積されにくくなり、市民が受けるサービスの質にも影響します。
川村先生が繰り返し強調されたのは、「まず実態を調べること」です。職種別の人数、男女比、給与、勤続年数、公募の実施、昇給上限、人事評価、雇止めの状況を把握し、近隣自治体と比較する。総務省の調査や情報公開請求も活用し、事実に基づいて議会で改善を求めることが必要です。
また、自治体が業務を民間委託した後も、そこで働く人の賃金や労働条件を「民間のこと」として切り離さないため、公契約条例や発注時の人件費積算を確認する重要性も共有されました。
2 介護・保育に広がるスポットワーク―人手不足だけで判断しない
介護福祉士・フリーライターの白崎朝子さんからは、介護、障がい福祉、保育分野に広がるスポットワークの問題が報告されました。スポットワークは、アプリを通じて数時間または1日単位で働く仕組みです。
人手不足を補う手段として広がっていますが、利用者や子どもの状態を理解し、継続的な信頼関係を築くことが必要なケア現場では、十分な研修や引継ぎがないまま仕事を任せることが、安全上のリスクにつながります。事故が起きた場合に、現場で働いた個人だけへ責任が集中し、配置や教育を決めた事業者の責任が曖昧になる点も問題です。
自治体がスポットワーク事業者と連携協定を結ぶ例も増えているため、連携の有無、利用している施設、研修・監督体制、事故やヒヤリハット、利用者・保護者への説明を調査する必要があります。人手不足対策を、安定雇用や人材育成の代わりにしてはなりません。
3 私からの報告―働いても報われない。逃げても制度につながらない
私は、「ひとり親を想定しない働き方モデルと女性の貧困」をテーマに、実際に受けた相談事例と公的統計を基に報告しました。
母子世帯の母の就業率は86.3%です。多くのシングルマザーは、すでに働いています。それでも、母自身の平均年間就労収入は236万円、中央値は200万円にとどまります。また、「子どもがいる現役世帯」のうち大人が一人の世帯員の相対的貧困率は44.7%で、大人が二人以上の世帯の6.7%を大きく上回ります。就業しているかどうかだけでは、生活の安定を説明できません。
背景には、子どもが熱を出した時に迎えに行く人、残業時に夕食や送迎を担う人など、家庭内に「もう一人のケア担当者」がいることを暗黙に想定した働き方があります。ひとり親は、仕事、家事、育児、学校対応、病気対応を一人で担います。働く時間を増やしても、税・社会保険料、児童扶養手当、保育料、送迎や病児保育などの追加費用が重なり、額面収入ほど手元に残るお金が増えない場合があります。政策は、就業率や年収だけでなく、可処分所得と親子の時間が改善したかで評価すべきです。
精神的暴力や経済的支配から、子どもと避難しようとした女性の相談では、住まい、就学、給付の振込先、生活費という複数の問題が同時に発生しました。制度は存在していましたが、所管が分かれ、危機の時間に一つの支援計画としてつながっていませんでした。
また、終業式の日、母親が働いている間に家に昼食がなく、子どもたちだけで過ごしていた事例も紹介しました。これは「親が働いていない家庭」の問題ではありません。親が働いているからこそ、長期休暇中の食事と居場所に空白が生まれる問題です。就労支援と、学童、昼食、病児保育、送迎などのケア基盤を一体で整える必要があります。
数字で見る「働いても報われない」構造
86.3%母子世帯の母の就業率
236万円母自身の平均年間就労収入
(中央値200万円)
44.7%大人が一人の子どもがいる現役世帯の相対的貧困率
国に求めた8つの政策
分科会での報告と相談現場の事例を基に、関係府省庁へ次の8項目を要請しました。
1
初動72時間の全国標準化
離婚前・別居前、精神的暴力や経済的支配を含む相談に対し、安全、住まい、学校、給付、仕事を一枚の支援計画でつなぐ。
2
「空室」ではなく即入居できる住宅
鍵、水回り、衛生、防犯、修繕を事前に確認し、24~72時間以内に子どもと暮らせる住宅を確保する。
3
子どもの就学継続と情報保護
避難や住所異動だけを理由に転校させず、区域外就学等を迅速に判断し、居所や学校情報を守る。
4
給付を実際の養育者へ
一時給付を含め、現に子どもを監護・養育する者へ安全に届け、必要な場合は振込保留・口座変更・代替支給を可能にする。
5
ひとり親を包摂する働き方とケア基盤
予測可能な勤務、有給の子の看護等休暇、柔軟勤務、長期休暇中の昼食・居場所、自営・起業支援を整える。
6
働くほど可処分所得が増える制度へ
税、社会保険、児童扶養手当、保育、住宅、教育支援を横断して手取りを試算し、複数制度の同時変化を緩和する。
7
養育費を子どもの権利として実現
合意、受給、支払停止時の執行まで公的に支え、公的立替・回収も検討する。
8
全国共通基準・恒久財源・統計・KPI
制度を利用できなかった理由も把握し、自治体差を可視化して、毎年改善を検証する。
全国の議員・支援者との討議で出された声
後半の討議では、全国の自治体議員や支援者から、それぞれの地域の実態が報告されました。
- 学校図書館司書、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、女性相談員など、子どもや家庭を支える専門職の多くが会計年度任用職員で、短時間・低賃金・不安定雇用となっていること。
- 子ども食堂は大切な地域の居場所である一方、本当に困難な家庭ほど外へ出る力がなく、利用につながりにくいこと。子ども宅食、訪問、コミュニティフリッジなど、アウトリーチ型の支援が必要であること。
- DV等から避難する際、母子生活支援施設や公営住宅があっても、定員、要件、老朽化、即入居性の問題で使えない場合があること。
- 自治体が委託・指定管理・公共工事を通して地域の賃金に責任を持つため、公契約条例や人件費の適正な積算・確認が必要であること。
- 民間団体や個人の善意だけに、食支援、DV避難、子育て支援を依存させず、行政が公的責任と恒久財源を持つ必要があること。
共通していたのは、「公共サービスの担い手を不安定な雇用に置き、生活支援を民間の善意だけに依存する仕組みを見直さなければならない」という問題意識です。
政策要請の提出と、これから
翌7月23日には、「女性の貧困とシングルマザーのワーキングプア解消、離婚・避難期における支援の切れ目解消に関する政策要請書」を、関係府省庁へ提出しました。伊万里市議会議員の木寺智子さん、みやき町議会議員の阿部真美さん、菊池市議会議員の菊池みどりさんとの連名です。
今後、設立準備中のシングルマザー議員連盟では、相談現場で見える匿名事例、自治体ごとの制度運用、正社員を続けられなかった理由、制度を利用できなかった理由、長期休暇中の食の困難などを共通様式で集め、政策データとして国へ届けていきます。
筑紫野市においても、会計年度任用職員の処遇と公募の運用、委託先で働く人の賃金、介護・保育分野のスポットワーク、長期休暇中の食支援、DV等からの避難時の部局連携と即入居住宅について、実態を確認し、議会での質問と政策提言につなげます。
私たちが求めているのは、特別扱いではありません。暴力や支配から離れる決断をした日に、住まい、学校、給付、仕事のすべてを失わなくてよいこと。働いた分だけ手元に残るお金が増え、子どもの食事と親子の時間が守られること。子どものための給付が、実際に育てている人へ安全に届くこと。
制度を「設けたか」ではなく、必要な人が危機の時間に「実際に使えたか」で評価する政治へ。全国の地方議員、当事者、支援者とつながりながら、地域から改善を進めていきます。
関連資料
- 女性の貧困とシングルマザーのワーキングプア解消、離婚・避難期における支援の切れ目解消に関する政策要請書
- 第4分科会「ひとり親を想定しない働き方モデルと女性の貧困」研究報告・政策提言資料
※数値は、こども家庭庁「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果」及び厚生労働省「2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況」等に基づきます。調査年、所得年、母集団、所得概念が異なるため、数字同士を直接差し引くものではなく、高い就業率と高い貧困リスクが併存する構造を示すために掲載しています。
筑紫野市議会議員 春口 あかね