活動履歴

不登校初期段階における児童及び保護者への支援体制について

文教福祉常任委員会
所管事務調査報告

不登校初期段階における児童及び保護者への支援体制について

調査日令和8年6月15日
所管課教育部 学校教育課
調査要求日令和8年5月27日
報告者春口あかね

※本報告書は、令和8年第3回定例会文教福祉常任委員会における所管事務調査資料及び発言録をもとに、調査の目的、確認された調査結果、主な質疑応答を整理したものである。

1 調査の目的

近年、全国的に不登校児童生徒数が増加しており、特に小学校低学年における登校不安や初期不登校への対応は全国的課題となっている。

本調査は、本市における不登校初期段階での支援体制、多機関連携、保護者支援、学びの保障等の現状を把握し、国・県の方向性との整合性や課題を検証するとともに、現場負担も踏まえた持続可能な支援体制のあり方を検討することを目的として実施した。

主な調査観点

  • 不登校・登校困難の現状把握(過去5年間の推移、小学校低学年、入学後初期段階の状況)
  • 初期支援体制(不登校初期対応マニュアル、学校・教育委員会対応フロー、家庭との連携方法、段階登校・別室対応等)
  • スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー等の配置状況及び支援内容
  • 教育支援センター、つくし学級、ICT、フリースクール等による学びの保障
  • 保護者支援、福祉部局・こども家庭部局との連携、ケース会議等の多機関連携
  • 指定校変更制度における不登校、心理的不安、登校困難への対応基準及び判断フロー
  • 国・県通知、COCOLOプラン、福岡県不登校児童生徒支援グランドデザインとの整合性

2 調査結果

2-1 不登校・登校困難の状況

学校教育課資料では、本市における不登校児童生徒数は過去5年間で増加傾向にあることが示された。令和3年度304人から令和7年度527人へ増加しており、5年間で223人増、約1.73倍となっている。

年度小学校中学校合計
令和3年度109人195人304人
令和4年度150人213人363人
令和5年度187人263人450人
令和6年度218人272人490人
令和7年度213人314人527人

主な特徴

  • 小学校は令和6年度218人をピークに、令和7年度は213人となり5人減少した。
  • 小学校1年生は令和6年度24人から令和7年度12人となり、12人減少した。
  • 一方、中学校は令和3年度195人から令和7年度314人へ増加し、令和6年度から令和7年度にかけても42人増加している。
  • 学年が上がるにつれて不登校者数が増える傾向が確認された。

2-2 市が示した支援方針

執行部は、本市においても福岡県不登校児童生徒支援グランドデザインに基づき、不登校支援を推進していると説明した。支援体制としては、チームサポート方式と、不登校予防診断チェックリスト(FF調査)の活用が示された。

  • チームサポート方式:学級担任一人にこだわらず、児童生徒と一定の関係ができている教職員等でチームを組織し、役割を明確にして支援を行うもの。
  • FF調査:30問程度のWebアンケートにより、学校生活・友人関係・家庭生活等を分析し、不登校リスクが高い児童生徒を特定し、早期段階から個別支援につなぐもの。
  • COCOLOプラン:不登校により学びにアクセスできない子どもをゼロにすることを目指し、学びの場の確保、心の小さなSOSの早期発見、学校風土の見える化等を掲げるもの。

2-3 筑紫野市教育振興基本計画・点検評価報告との関係

令和8年度筑紫野市教育振興基本計画では、「豊かな心の育成」において、不登校等の課題を抱える児童生徒が適切な支援を受けられるようになっていることをめざす姿として掲げ、教育支援センターを中核とした相談機能、登校支援員、ICTを活用した在宅学習、フリースクール利用者への関係機関連携等を令和8年度の主な取組としている。

令和7年度点検・評価報告書では、スクールカウンセラー対応件数61件、スクールソーシャルワーカー対応件数2,352件、教育支援センター相談件数27件(R7.10以降)が示されている。また、不登校児童生徒のうち解消・復帰等の改善がみられた割合は、小学生77.0%、中学生58.9%であり、目標値(小学生84.0%、中学生70.0%)には届いていない。

2-4 委員会質疑で確認された支援実績

  • つくし学級(教育支援センター・適応指導教室)利用児童生徒数:12人。
  • ICTを利用した通信学習等の利用児童生徒数:27人。
  • 令和7年度不登校児童生徒数:527人。
  • 執行部は、保護者・家庭と連絡が取れていることを踏まえ、「学びにアクセスできていない児童生徒はいない」との認識を示したが、委員からは「保護者と連絡が取れていること」と「児童生徒本人の学習機会が保障されていること」は別であり、527人の学びへのアクセス状況を具体的に把握する必要があるとの指摘があった。

2-5 調査要求項目に対する未確認・未提示事項

  • 不登校初期対応マニュアルまたは標準対応フローの有無は、委員会資料上では明確に示されていない。
  • 欠席何日目、またはどの状態で、担任・管理職・教育委員会・SC・SSW・教育支援センター等につなぐのかという基準は明確に示されていない。
  • 527人の不登校児童生徒について、通常登校一部あり、別室登校、校内支援ルーム、つくし学級、ICT在宅学習、フリースクール、教材配布、SC・SSW相談、未接続等の内訳は示されていない。
  • スクールソーシャルワーカー相談2,352件の内容別内訳、不登校関連件数、小学校低学年件数、家庭訪問・アウトリーチ実績、ケース会議件数は示されていない。
  • 指定校変更制度については、調査要求に含めた「不登校及び心理的不安等に関する変更事例」「柔軟対応事例」「判断フロー及び協議体制」に関する説明は、当日の資料及び質疑では十分に確認できなかった。

3 主な質疑応答(問→答)

No.答弁要旨
1小学校1年生の不登校が令和6年度24人から令和7年度12人へ半減した。登校支援員の具体的な成果なのか。また、中学生の不登校増加に対して有効な対策をどう捉えているか。小学校については、令和7年度に登校支援員を小学校専任で配置できたことにより、不登校の増加を抑えることに一定の成果があったと考えている。中学校については、一度不登校が発生すると復帰が難しい現状があるため、早期発見・早期対応が重要である。
2COCOLOプランは、学びにアクセスできない子どもをゼロにすることを目指している。筑紫野市では、不登校児童生徒への学びの保障をどのように行っているのか。まず学校現場でチームサポート方式による支援を行う。それでも学校に行けない児童生徒については、教育支援センターやつくし学級等によるサポートを行う。
3小中連携会議では、どのような内容を扱い、どのような効果があるのか。小学校と中学校の不登校担当教員が、小学校での不登校状況やこれまでの支援内容を中学校へ共有し、家庭訪問を含めた支援方法を引き継ぐ。中学校入学後も支援が継続できるようにすることを目的としている。
4幼保小連携はどのように行っているのか。幼稚園・保育園から小学校に進学する段階で、各園と進学予定の小学校が年度末に引継ぎを行っている。過ごし方や人間関係等で心配がある児童については情報共有し、進学段階で不安がないよう協議している。
5不登校と認定される前の「兆候がある児童」への支援体制はどうなっているのか。FF調査等で心配な動きがある児童生徒を把握し、教職員だけでなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等とも連携して、不登校の未然防止に取り組んでいる。
6FF調査は5月実施とのことだが、4月から登校できていない小学校1年生など、調査前の児童にはどう対応するのか。学校側から家庭に連絡し、家庭と協議しながら、どのようなサポートができるかを検討している。
7学校の関わりは理解したが、教育委員会としてはどう関わるのか。学校だけに任せるのではなく、教育委員会として今後どう支援していくのか。不登校の状況には、週3〜4日登校できている児童生徒から、ほとんど登校できていない児童生徒まで段階がある。登校状況の程度を分析し、それぞれの状況に応じてどのような支援が必要か、支援方策を検討していく。登校支援員の増員は、学校には来ているが教室に入りにくい児童生徒への支援強化として行っている。
8令和7年度の不登校児童生徒527人のうち、何人が学びにアクセスできているのか把握しているか。保護者・家庭と連絡が取れていないケースはないため、学びにアクセスできていない児童生徒はいないという認識を示した。
9保護者と連絡が取れていることと、実際に学びにアクセスできていることは違うのではないか。どのような学びにつながっているのか。保護者と対話する中で、ICT機器を利用した通信学習や、つくし学級の利用など、どのような形で教育を受けるかについて協議している。
10つくし学級の利用人数、ICTを活用している人数は何人か。つくし学級の利用児童生徒数は令和7年度12人。ICTを利用している児童生徒は27人との答弁があった。
11527人に対し、つくし学級12人、ICT27人は少ないのではないか。将来の社会参画を考えると、教育委員会だけでなく他課とも連携して支援する必要があるのではないか。卒業後の社会性の確保は重要であると認識している。県グランドデザインにもあるように、不登校の兆しの早期発見・早期対応に取り組む。校内サポートルームや不登校支援の充実に向け、今後も取り組んでいく。
12学校に戻すことが重要だと思っているのか。それとも、不登校児童生徒が別の学びの場につながることを重視するのか。文部科学省や県は柔軟な考え方を示している。最終的な目的は児童生徒の社会的自立であると考えている。学校復帰だけでなく、つくし学級、ICT、家庭での教育など、保護者と協議しながら、その子にとって何が一番よい選択肢なのかを相談・支援していく。

4 調査を通じて確認された主な課題

「学びへのアクセス」の定義が不明確

保護者と連絡が取れていることをもって「学びにアクセスできていない児童生徒はいない」とする認識が示されたが、子ども本人が実際に学習機会、相談支援、居場所、社会的接点につながっているかを確認する必要がある。

527人の支援接続状況の内訳が未把握または未提示

不登校児童生徒527人のうち、つくし学級12人、ICT利用27人以外について、どのような学習支援・相談支援につながっているか、内訳を明確にする必要がある。

4月・入学直後の初期支援フローが見えにくい

FF調査は5月実施であるため、4月から登校できない新1年生等について、何日目に誰が関与し、どの支援につなぐのか、標準フローが必要である。

教育委員会の主体的関与が曖昧

答弁は学校・家庭の連絡や協議を中心とする内容が多く、教育委員会がどの時点で介入し、教育支援センター、SC、SSW、福祉部局等につなぐのかが明確ではない。

SSW等の専門職活用の内訳が不足

SSW対応件数は2,352件と多いが、不登校関連件数、小学校低学年件数、家庭訪問、アウトリーチ、ケース会議の実績が示されていない。

指定校変更制度との接続が未整理

指定校変更制度について、心理的不安・登校困難・不登校等を理由とする変更事例や判断フローが、当日資料では十分に示されなかった。

5 今後確認・検討すべき事項

  • 令和7年度不登校児童生徒527人について、学びへのアクセス状況を分類して把握すること。例:一部登校、別室登校、校内支援ルーム、つくし学級、ICT在宅学習、フリースクール、教材配布、SC相談、SSW相談、家庭訪問、未接続等。
  • 欠席1日〜29日段階、特に入学直後・小学校低学年の登校困難に対する標準支援フローを整理すること。
  • FF調査でリスクが高いと判定された児童生徒数、その後チームサポート方式、SC、SSW、教育支援センター等につながった人数を把握すること。
  • SSW対応件数2,352件について、不登校、家庭環境、発達、貧困、虐待、保護者支援、学校との関係調整等の相談内容別内訳を確認すること。
  • 教育支援センター・つくし学級・ICT在宅学習の利用開始までの流れ、平均期間、学年別内訳、出席扱い・評価への反映状況を確認すること。
  • 保護者支援について、保護者を「原因」と見るのではなく、伴走支援の対象として、連絡頻度・相談窓口・SSW等による調整の仕組みを整えること。
  • 指定校変更について、不登校・心理的不安・登校困難の場合の判断基準、支援実施後の再検討条件、過去の申請・許可・不許可件数を確認すること。

6 まとめ

本調査により、筑紫野市の不登校児童生徒数は増加傾向にあり、令和7年度は527人に達していることが確認された。執行部は、県グランドデザインやCOCOLOプランに基づき、チームサポート方式、FF調査、教育支援センター、登校支援員等による支援を進めていると説明した。

一方で、学びへのアクセス状況については、保護者との連絡の有無にとどまらず、児童生徒本人がどの学習支援・相談支援・居場所につながっているのかを具体的に把握する必要がある。つくし学級12人、ICT利用27人という答弁からも、527人全体に対する支援接続状況の可視化が今後の重要課題である。

また、正式に不登校として計上された後だけでなく、入学直後や欠席初期、不登校兆候の段階で、誰が、いつ、どの支援につなぐのかという初期支援フローを明確化することが求められる。学校現場の負担を踏まえ、教育委員会、教育支援センター、SC・SSW、こども家庭部局、福祉部局、地域資源等が役割分担し、子どもの学びと社会的自立を支える体制づくりを継続して検討する必要がある。

© 2023 春口あかね