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国民健康保険制度の安定と制度改善について

一般質問原稿 春口あかね


 国民健康保険制度は、被用者保険や後期高齢者医療制度に加入していない市民を支える重要な制度です。

 特に低所得者層にとっては最後の受け皿とも言える制度であり、私はこの制度を持続可能な形で守る立場から質問いたします。

 まず現状を確認します。

 国民健康保険の被保険者数は毎年右肩下がりで減少しております。

  • R4:19,642人
  • R5:18,685人(▲957人)
  • R6:17,836人(▲849人)
  • R7:17,116人(▲720人)
  • R8:16,467人(▲649人)

しかし一方で、一人当たりの保険給付費は増加しています。

(画像②)R8予算

  • R4:349,708円
  • R5:370,457円(+20,749円)
  • R6:375,792円(+5,335円)
  • R7:388,190円(+12,398円)
  • R8:399,195円(+11,005円)

人数は減っているのに、医療費は上昇している。

これが現在の国保の構造です。

 令和8年度は、被保険者数が16,467人まで減少する見込みで、1人当たり保険給付費は約39万9千円まで上がる見込みと示されています。(議案第28号_令和8年度国保特会予算)

厚生労働省が示す資料では、1人当たりの医療費は

~64歳約20万円
65~69歳約40万円
70~74歳約70万円

とされており、若年層との差は30万円です。

筑紫野市の国保加入者の約29%が70〜74歳だということを考えると、人口減少の中で、年齢構成の変化が今後の財政に与える影響が、国保の持続性にとって大きな課題となっております。

 実際に、国保加入者の子育て世帯、とりわけひとり親世帯からは

「働いて収入が増えたのに、手取りが増えない」という声を耳にします。


(画像)

国保税は

  • 所得に応じて増える所得割
  • 人数に応じてかかる均等割
  • 世帯ごとにかかる平等割

で構成されています。

 つまり現状は働くことができない子どもであっても、医療給付分と後期高齢者支援金分の均等割が課されています。

人数に応じた負担構造が、子育て世帯の負担感につながっている側面があります。


そこで一定の所得に達したとき

「これ以上働くと割に合わないのではないか」
「このまま国保にいるのは不利ではないか」

と感じる状況は、いわゆる「壁」と呼ばれます。

これは計算して避けるというより

負担が急に重くなったという“体感”によって生じるものです。

 特に国民健康保険は、年金や将来保障との関係も含めて比較されやすく、社会保険に移行可能であれば、その方が合理的だと判断されやすい構造を持っています。

令和7年度は税率は据え置きでしたが、限度額は

医療給付分が65万円から66万円へ、

後期高齢者支援金が24万円から26万円へと引き上げられました。

これらの見直しは国の制度改正に応じて行われるものですが、将来の負担水準が見通しにくいことも、不安の要因になっていると考えます。

 そして、令和8年度からは新たに税率の改定が予定されています。

具体的には、医療給付分の所得割は6.83%から7.12%へ引き上げられ、

均等割は28,100円から30,863円へ、

平等割は25,900円から27,901円へと、それぞれ引き上げられています。

 これは、被保険者数の減少に伴う税収減に対応するため、

保険税の引き上げによって税収を維持する対応であると受け止めています。

 しかし、被保険者が減少し続ける中で負担を引き上げる対応は、

負担感の増大や制度離脱を招き、結果として被保険者数の減少をさらに加速させる可能性があります。

 つまり、構造的な課題に対して、負担の上乗せで対応することが、長期的に見て持続可能な解決策となり得るのか、慎重に検討する必要があると考えます。

 さらに、令和8年度からは子ども・子育て支援金の徴収も始まります。

もちろん、後期高齢者医療の支援金と比べれば規模は大きいものではなく、国の試算でも平均で年間数千円程度とされています。

しかし問題は金額の大小ではなく、すでに厳しい構造にある国民健康保険制度の中で、さらに新たな負担を重ねていく制度設計が適切なのか、子育て支援と言いながら、子育て世帯が負担をさらに負う構造になっていないか、という点です。


働いて働いて働いて働いて働いても報われない。

市民からはこのような声が聞こえてきます。

こうした状況が続けば、人は合理的に行動します。

  • 収入を抑える
  • 働く時間を減らす
  • 早い段階で法人化する

 これはモラルの問題ではなく、制度の帰結です。単なる個人の家計の問題ではなく、市全体の経済活力、納税者の就労意欲を削いでいると考えます。

 そして問題は、その行動が制度自体に跳ね返ってくることです。

 被保険者が減少し、高齢寄りの構造が進めば、税収母数は縮小します。

 一般的に、年齢が上がるほど一人当たり医療費は急増することが示されています。

(画像③)

被保険者構成が高齢寄りになることは、財政圧力の上昇と直結します。

「被保険者数の減少率別シミュレーション(現状▲4.3%を基準)」

こちらは、被保険者数の将来推移を想定し作成したものです。

縦軸は被保険者数、横軸は経過年数を示しています。

現在の17,836人を起点に、減少率の違いによる4つのケースを示しています。

  • 黒の線は年▲5%の減少で、対策を講じない場合の悪化ケース
  • 赤の線は年▲4.3%で、現在の実績に近い推移
  • 黄色の線は年▲3%で、一定の軽減施策等による減少抑制
  • 緑の線は年▲2%で、より踏み込んだ構造改善を行った場合を想定しています。

現在、被保険者数は約▲4%前後で減少しており、これは年間約800人規模の減少に相当します。

人口減少や社会保険適用拡大の影響が重なる中で、被保険者数の減少自体は避けがたい構造にありますが、その減少のスピードをどうコントロールするかによって、将来の財政は大きく変わります。

例えば、対策を講じないまま年▲5%で推移した場合、10年後には約11,000人規模まで縮小する可能性があります。

一方で、減少率を▲2%程度まで抑えることができれば、約14,000人台を維持することが可能です。

この差は約3,000人規模となります。

1人あたりの国保税収を約10.8万円とすると、

3,000人の差は約3億円規模の税収差に相当します。

つまり、このグラフが示しているのは、減少そのものではなく、「減少率の違い」が将来の財政に与える影響の大きさです。

 仮に、均等割の緩和を拡大した場合の単年度の数千万円規模の調整よりも、被保険者構成の変化の方が、はるかに大きな財政影響を持つ可能性がある、ということです。

次に、国保財政の構造を確認します。


令和8年度予算の歳入内訳は、

  • 県支出金:約66億円
  • 国民健康保険税:約19億円
  • 繰入金:約8億円

となっています。

 つまり、国保はすでに、市単独の税収だけで成り立っている制度ではなく、県との共同運営の中で支えられている制度です。

 続いて収納率についてですが、令和6年度決算資料をみると、現年度収納率は94%を超えていますが、滞納繰越分は約20%にとどまっており、一度滞納に陥ると回復が難しい構造が見て取れます。

 私は繰入そのものを問題視しているのではなく、なぜ繰入が必要な構造になっているのかを精査する必要があると考えます。


 応能負担は、社会保障制度として重要だと考えます。

収入が多い人が相応の負担を担うことは当然の前提です。

 ただし、負担の増え方が急で、将来の見通しが立ちにくい制度では、応能負担は制度を支える力になりません。

必要なのは、収入が増えるほど、負担もなだらかに増える設計です。

 段差を緩和し、予測可能にすることが、若年層の離脱抑制、滞納抑制、被保険者構成の安定につながる可能性があります。

 軽減がリスクなのではなく、構成悪化こそ最大のリスクであり、国保を国保として持続させるための構造調整と位置づけるべきではないでしょうか。

国保の課題は、被保険者が減る中で高齢化が進み、負担を上げるほど若い世代が離れやすくなる構造にあります。

だからこそ、子育て世帯や働く世代への急激な負担増を緩和することは、単なる福祉施策ではなく、制度安定化策として検討すべきです。


国保は国制度ですが、市には

  • 税率設定
  • 軽減運用
  • 繰入の在り方
  • 段差緩和策

といった裁量があります。

全国では、子育て期に着目した独自施策も広がっています。

 国は現在、国民健康保険の均等割軽減措置の対象年齢を、未就学児から高校生(18歳年度末)まで拡大する方向で検討する方針が示されています。

 これは、均等割という人数に応じた負担に課題があることを、国としても認識している表れだと受け止めています。

 しかし、制度実施までには一定の期間があります。その間、被保険者構成の変化は止まりません。

 その空白期間をどう位置づけるのか、そこから上乗せするのかは、市の判断になります。

 仮に65歳未満の被保険者が減少すれば、税収は億単位で減少します。

 むしろ問うべきは、被保険者構成の変化によって、税収母数が縮小していく構造そのものです。

 構造的な数億円規模の減少リスクと比べれば、数千万円規模の段差緩和は、制度を守るための調整として十分に検討に値するものだと考えます。


 問題は負担の大小ではなく、負担の増え方と将来の見通しです。

短期の対応ではなく、この制度を続けた場合に人がどう行動するのか、

その結果、財政がどうなるのか。

現行構造を維持するのか、段差を緩和するのか。

市としてどちらの前提で制度を運営していくのか。

将来予測とリスク管理の観点から6つ伺います。

1.個人・フリーランス・非正規雇用等の就労形態の方の国保税負担による生活への影響をどう考えているか。

2. 国保税の仕組みが子育て世帯の就労意欲や収入増加を抑制する「壁」になっていないか検証する考えはあるか。

3. 制度回避的な行動や、成長段階と異なる法人化が生じている可能性について、市はどう認識しているか。

4.制度回避のための法人化が国保の被保険者数減少や財政構造に影響している可能性を市はどうみているか。

5.より一層の国保税の軽減・減免等が継続納付を促し国保制度の中長期安定に資すると考えるが市の考えを伺う。

6. 被保険者数減少と医療費増を踏まえ、今後の国保税の見通しやリスク認識、市民への説明の考えを伺う。

【執行部答弁】

国民健康保険制度の安定と制度改善について

(1)

個人・フリーランス・非正規雇用等の就労形態の方の国保税負担による生活への影響をどう考えているか。

国保税は前年中の世帯所得や被扶養者の人数に応じて、あらかじめ税額を軽減する措置を講じております。

また、所得が激減した世帯に対しては、さらに負担の軽減を行う手立てを設けるなどし、生活へなるべく影響が出ないよう配慮しております。

(2)

国保税の仕組みが子育て世帯の就労意欲や収入増加を抑制する「壁」になっていないか検証する考えはあるか。

国保制度が国民健康保険制度の一翼を担うものであることや国保税の賦課、軽減等の取扱いについては国の規定に基づき運用しておりますので、検証は国において必要に応じて行われるものと考えております。

(3)

制度回避的な行動や、成長段階と異なる法人化が生じている可能性について、市はどう認識しているか。

さまざまな医療保険制度が併存する国民皆保険制度の構造に起因する課題であると考えますので、引き続き、国及び県に対して医療保険制度の一本化に向けた抜本的な改革を求めてまいります。

(4)

制度回避のための法人化が国保の被保険者数減少や財政構造に影響している可能性を市はどうみているか。

本市のみならず国保における被保険者数と税収の推移は、法人化の影響というよりもむしろ医療の高度・先進化や被保険者の高齢化等が要因と考えております。

(5)

より一層の国保税の軽減・減免等が継続納付を促し国保制度の中長期安定に資すると考えるが市の考えを伺う。

さらなる軽減や減免を行う場合は減収分を一般会計からの繰入れで補填することになり、国保加入者以外の市民との公平性が保てない状態になります。

現在、市町村国保の財政基盤の脆弱性を改善していくため、県下全ての市町村で保険税率を統一していく取組みが進んでおり、それらを通じて国保制度の中長期的な運営の安定が図られるものと考えております。

(6)

被保険者数減少と医療費増を踏まえ、今後の国保税の見通しやリスク認識、市民への説明の考えを伺う。

今後も被保険者数の減少や医療費の増加が見込まれることから、国保を取り巻く現状と見通しについて、納税通知や広報誌などで情報発信に努めてまいります。

再質問

・軽減制度があることは承知しています。私が問いたいのは、その網から漏れる層のことです。市は『配慮している』と言いますが、現実に所得が少し増えただけで軽減が外れ、社会保険料の負担増に苦しむ『働き盛りの子育て世代』の声が届いていませんか。彼らが『国保にいる限り豊かになれない』と絶望して離脱していくことを、市は本当に『想定内』としているのですか?市として、軽減の対象外で負担感が強い層(子育て中の中間所得層、収入が変動する層など)がどれくらいいて、どのような影響が出ていると認識していますか。具体的に、世帯類別(子育て世帯・ひとり親世帯等)の滞納発生、分納相談、国保離脱の傾向を把握していますか。

・医療保険制度自体の統一を進める方針には賛成です。しかしその過程が県統一であり、さらには令和15年を目標としている、いわば遠いゴールです。毎年900人前後で加入者が減少することを踏まえると、それまでの税収減はどれくらいになると予測し、その失われる億単位の責任をどう考えるのか、座して死を待つのかを問われていると考えます。

現状のままだと、医療費削減の努力や収納率向上の努力を行っている自治体ほど、その成果が保険料に反映されにくくなり、健康に努めている県民、市民や自治体に不公平感が生じるおそれがあります。

私は医療費適正化や収納努力が“報われる枠組み”を設けることがセットであるべきだと考えます。

例えば、県としてインセンティブ交付金や、収納率・保健事業の成果に連動した配分など、努力が反映される仕組みを国や県に求める考えはありますか。独自に『18歳までの均等割全額免除』などを実施している自治体が既に存在することを踏まえ、筑紫野市の方向性をお聞かせください。

【執行部答弁】

被保険者数の減少により国保税収も減収となる見込みですが、同時に医療費の支出も緩やかに減少していくと見込まれることから、慎重に状況を注視してまいります。

また、市町村独自の医療費適正化や収納率向上などの取組みは、国保税率等の統一後も継続すべきものと考えております。

令和9年度から均等割額の軽減措置を高校生世代まで拡充する方針が国から示されておりますが、さらなる負担軽減策の拡充・強化や医療保険制度間の負担の公平性の確保などについて、国及び県に求めてまいります。

【春口】

今後も負担の増加が続くのであれば、議案には反対せざるを得ないと考えています。

今回については、国や県に対して制度改善を強く求めていくという明確な意思が示されたことを踏まえ、その実行を前提として注視することといたしますが

実効性ある対応が見られない場合には、改めて見直しを求めていくことを申し添え、私の質問を終わります。

2025/3/5 総務市民常任委員会

年度被保険者
R518,685
R617,836
R8見込16,467

令和8年度 税率引き上げ

条例改正

医療給付分
所得割

6.83% → 7.12%

均等割

28,100 → 30,863円

平等割

25,900 → 27,901円

増税で税収維持。 

© 2023 春口あかね