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学校に生理用品は置くべきか

「予測力」論を超えて、子どもの尊厳とジェンダー平等から考える

※この記事は、令和7年12月11日に開催された筑紫野市議会・文教福祉常任委員会での議論をもとに、学校における生理用品の設置を「人権・ジェンダー・行政の責任」という観点から再整理したものです。委員会で実際に示された考え方と、それに対する私自身の所感をまとめています。

問われたのは「生理用品」ではなく、行政のものさし

委員会で示された学校教育課側の基本的な考え方は、次のようなものでした。

「生理用品は、子どもが自分で予測し準備する力を育てるため、
 トイレではなく保健室で管理・配布するのが望ましい」

一見すると「教育的配慮」にも聞こえます。

しかし私は、この考え方には

  1. 医学的事実との乖離
  2. 人権・ジェンダー政策との不整合
  3. 行政判断としての不適切さ

という、少なくとも三重の問題があると感じました。


① 月経は「予測できない」のが医学的な標準

まず大前提として確認すべきなのは、月経は思春期において予測困難であるという医学的事実です。

日本産科婦人科学会、日本小児内分泌学会、WHOなどの医学的知見では、

  • 初経から数年間は「無排卵周期」が多い
  • 周期・出血量・症状が安定しないのは正常な発達過程

とされています。

つまり、

「予測する力を育てる」

という考え方自体が、医学的根拠を持たない独自概念に過ぎません。

医学的に予測できない現象に対して、
「予測できなかった本人の責任」に帰着させることは、
教育でも支援でもなく、自己責任論の押し付けです。


② 「保健室へ行けばいい」という前提が現実を無視している

月経が突然始まった瞬間、

  • 漏れや汚れへの不安
  • 周囲の目への恐怖

から、生徒は動けなくなることが少なくありません

体育館・運動場・別棟の教室から保健室までの移動は、
実務上ほぼ不可能な場面も多くあります。

特に中学生は、

  • からかい
  • いじめ
  • 不要な注目

を避けるため、保健室利用そのものをためらう傾向が強いとされています。

それにもかかわらず、

「困ったら保健室に行く」

ことを前提にするのは、
行政が負うべき配慮を、生徒側に転嫁している状態だと私は考えます。

必要な物を、必要な場所(=トイレ)に置く。
これは特別な支援ではなく、合理的配慮です。


③ 文科省方針・ジェンダー政策との明確な不整合

文部科学省の『生徒指導提要』では、

  • 児童生徒が安全・安心な環境で学ぶ権利
  • ジェンダーの視点を踏まえた学校環境整備

が明記されています。

また政府は、SDGs目標⑤(ジェンダー平等)に基づき、

  • 生理の貧困への対応
  • 月経による学習機会の損失防止

を自治体に求めています。

「予測指導」を理由に、生理用品をトイレに置かない運用は、
国の方向性とも、生徒の権利保障とも逆行しています。


④ 全国では「トイレ設置」がすでに主流

実際、全国では次のような自治体が、
学校や公共施設のトイレへの生理用品設置を進めています。

  • 都市部:札幌市、福岡市、北九州市、大阪市、京都市、広島市、神戸市 など
  • 中規模市:大野城市、飯塚市、宇治市、松江市、鹿児島市 など

導入理由は共通しています。

  • 生徒の困りごとに即対応できる
  • 生理の貧困対策
  • ジェンダー配慮
  • 教職員の負担軽減

「予測力を育てるため、保健室のみ」と明言している自治体は、
ごく少数か、ほぼ見当たりません

これは「将来の話」ではなく、
すでに今、標準になりつつある対応です。


⑤ 「取りすぎ」「不用額」論は根拠にならない

委員会では、

  • 生徒が必要以上に持ち帰るのではないか
  • 不用額が出るのではないか

という懸念も示されました。

しかし、先行自治体では

  • 「取りすぎ問題」はほぼ報告されていない

というのが実態です。

生理用品は

  • 恥ずかしさ
  • 社会的視線
  • 自宅でも入手可能

といった要因から、乱用が起きにくい生活必需品です。

トイレットペーパーや石けんと同様、
「取れないこと」こそが問題であり、
「取りすぎ」は政策判断の根拠にはなりません。


ジェンダーの観点で進めるべき理由

私は、この問題は

ジェンダーの観点から進めるべき課題

だと明確に考えています。

それは、

  • 誰かを甘やかすためでも
  • 学校現場を否定するためでもありません。

月経は、

多くの生徒に毎月起こる、日常的な健康・人権課題

だからです。

大型ショッピングセンターや公共施設では、
すでに生理用品が「当たり前」に設置され始めています。

自治体間でも、学校トイレへの設置は確実に広がっています。

その中で、

「学校だけが例外」

であり続ける合理性は、
もはや見出しにくいと感じます。


縦割りを越えて、統一ガイドラインを

現在の筑紫野市では、

  • 人権政策課:国・国際基準に沿ってジェンダー平等を推進
  • 学校教育課:月経支援を人権課題として十分に位置づけていない

という政策上の乖離が生じています。

私は、

  • 学校教育課
  • 人権政策課
  • 保健師
  • 養護教諭代表

による横断的なワーキンググループを設置し、

  • トイレ設置を原則とした統一基準
  • 医薬品等需用費を活用した調達方法
  • 教職員へのジェンダー・月経理解研修
  • 毎年度の点検と改善

を盛り込んだガイドライン策定が必要だと考えています。


「困ったと言わなくていい学校」へ

生理用品の設置は、
小さな配慮に見えるかもしれません。

しかしそれは、

  • 子どもの尊厳
  • 学習機会の保障
  • ジェンダー平等

すべてにつながる問題です。

「困ったときに、困ったと言わなくていい環境」

それを学校で実現することは、
教育以前の、人権の話だと私は考えています。

このテーマについて、
これからも市民の皆さんと一緒に考え、
行政に問い続けていきたいと思います。

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