活動履歴
【訪中報告書:2025九州自治体議員平和友好訪中団】

日程 | 都市 | 時間帯 | 内容 |
4月21日(月) | 福岡 → 北京 | 午後~夜 | 15:10 福岡空港発(CA954便・大連経由)、19:00 北京着 |
4月22日(火) | 北京 | 午前 | 中国人民対外友好協会、全人代日中友好小組、国際友好連絡会などと交流・意見交換 |
午後 | H3Cテクノロジーズ訪問(AI・クラウド・5G・DeepSeek視察)北京市自動運転デモ区視察 | ||
4月23日(水) | 北京 → 哈爾濱 | 朝~午前 | 07:55 北京発(CA1643便)→ 10:20 哈爾濱着 |
哈爾濱 | 午後~夜 | 731部隊罪証陳列館訪問・中国人青年との対話、市内散策・地元市民との交流(ソフィア教会広場など) | |
4月24日(木) | 哈爾濱 → 瀋陽 | 午前 | 旧憲兵警察庁を見学(趙一曼の紹介) |
午後~夜 | バスで瀋陽へ移動、918記念館・満州事変現場を視察、田雪氏と瀋陽市街視察 | ||
4月25日(金) | 瀋陽 → 撫順 → 大連 | 午前 | 撫順市へ移動、平頂山記念館・撫順戦犯管理所を視察 |
午後~夜 | 瀋陽市内視察(長崎の鐘)後、新幹線で大連へ移動 | ||
4月26日(土) | 大連 → 福岡 | 午前~午後 | 朝食後、大連空港へ。11:20発(CA953便)→ 14:10 福岡着 |
■1日目(4月21日 月曜日)
- 15:10 福岡空港を出発(CA954便にて大連経由)
- 19:00 北京到着
■2日目(4月22日 火曜日)
8:30~12:00
- 中国人民対外友好協会、全国人民代表大会、全人代日中友好小組、中国国際友好連絡会などとの交流を行い、日中友好の意義や今後の協力について意見交換を実施。

午後:H3Cテクノロジーズ訪問
- 同社はネットワーク機器からクラウド、AI、セキュリティ、5Gまで幅広く展開している。
- クラウドとAIを融合した「デジタルブレイン構想」が印象的で、企業や政府のデジタル変革を支援している。
- 最先端の技術とインフラを視察し、デジタル時代のイノベーションの重要性を再認識。
- H3Cは自社の統合AIプラットフォーム「灵犀Cube(LinSeer Cube)」の中核に、DeepSeekモデル(R1など)を搭載して提供。
このプラットフォームを用いて、医療AI(病理診断など)、行政支援、ビジネス分析などに応用。
実際の事例として、深圳の医療AI企業と協力し、DeepSeekを使った病理画像診断AIを展開し、診断スピードを向上させた実績がある。
北京市内視察
- 北京市の高級別自動運転示範区(BJHAI)を訪問。昨年の段階では運転手が同乗していたが、今回は完全無人運転車に進化しており、運転席自体がない車両も見学。技術進歩の速度に圧倒された。
- 中国では既に11都市で自動運転に関する法律が整備され、社会実装が急速に進んでいる現状を学ぶ。
■3日目(4月23日 水曜日)
- 07:55 北京を出発(CA1643便)
- 10:20 哈爾濱(ハルビン)に到着
哈爾濱731部隊罪証陳列館
- 731部隊罪証陳列館(資料館)を訪問。過去に行われた非人道的行為について深く考えさせられた。
731部隊とは…
表向きは「防疫・給水部」と称していたが、実際には細菌戦のための実験や研究を秘密裏に行っていた。その具体的な内容は以下のとおりである。
- 細菌兵器の開発
• ペスト、コレラ、赤痢、チフスなど致死性の高い細菌を兵器として利用する研究が進められた。
• 細菌を搭載した爆弾や、細菌で汚染した飲料水・食料を敵地に散布する方法が検討された。 - 人体実験
• 捕虜や中国人、ロシア人、モンゴル人、朝鮮人などを対象に「マルタ(丸太)」と呼び、人間を実験台にした非人道的な実験が行われた。
• 生きた人間を用いた細菌感染実験、凍傷や低温下での人体耐久実験、外科手術の練習、薬物や毒物の人体への影響調査などが実施された。
• 人体実験の犠牲者は数千人から1万人を超えると推定されている。 - 細菌戦の実戦投入
• 中国各地(特に浙江省など)で、実際にペスト菌を保有するノミを散布するなどの細菌戦が実行された。
• これらの攻撃によって数千人以上の民間人が犠牲となった。
▪︎終戦時の隠蔽と米軍との取引
1945年8月、日本の敗戦が決定的になると、731部隊は施設を破壊し証拠隠滅を図った。実験に関わった資料や実験施設、実験台として生き残っていた人々をすべて処分し、部隊関係者には沈黙を強制した。
戦後、米軍は731部隊の責任者である石井四郎中将ら幹部との交渉を行い、人体実験や細菌兵器に関するデータを引き渡す代わりに、戦犯訴追を免除するという取引を行った。このため、部隊の関係者の多くは戦後処罰を逃れた。
▪︎現在の評価と歴史的意義
731部隊の実態は、長い間タブー視されてきたが、1970年代以降、日本と中国の研究者、元隊員の証言、関連文書の発掘により実態が明らかになった。
国際的には、731部隊の活動は戦争犯罪、人道に対する罪として非難されている。中国や韓国では今なお歴史問題として取り上げられ、日本に対して公式の謝罪や詳細な調査の要求が行われている。日本国内では、これらの歴史を明確に認識し、二度と同じ過ちを繰り返さないための教訓として、教育や歴史研究が続けられている。
資料館の最後のブースに、ある日本人の証言が残されていた。その内容は、ある証言の中に、こういう言葉があった。
「私は自分の犯した罪の非常に大なることを自覚しております。そうして終始懺悔をし、後悔をしております。私は将来生まれ変わって、もし余生がありましたらば、自分の行いました悪事に対しまして、生まれ変わった人間として人類のために尽くしたいと思っております。」
その言葉が、私の胸に深く残っている。
加害の歴史を直視することは、時にとても苦しく、逃げたくなる。でも、だからこそ向き合わなければならない。
過ちを繰り返さないために、歴史から学び、語り継ぎ、平和のために自分にできる行動を重ねていく責任があると強く感じた。
- 資料館で出会った中国人青年との対話を通じて、歴史認識の重要性を再確認。
- 夜は牧瀬議員と市内を散策し、地元の中国人男性と交流を深め、日中間の歴史認識や将来的な友好の必要性について深く議論した(詳細は別途資料にて)。
- その後、ソフィア教会堂広場を約20分間察し、哈爾濱の活気を実感。
■4日目(4月24日 木曜日)
- 午前:旧憲兵警察庁を見学。
- 私と同い年である当時の革命家「趙一曼」さんのエピソードが紹介され、同行していた議員は私と重ね合わせて涙を流し、私自身も胸が熱くなった。満州事変(1931年)後、日本による満洲国建国を受けて、彼女は東北抗日聯軍に参加。この軍は、中国共産党が主導した日本軍へのゲリラ抵抗組織であった。彼女は女性ながらも、政治指導員・宣伝幹部として前線に立ち、また実際に武装戦闘にも参加。
「母はあなたに会えなくなるけれど、あなたは立派な人になってください。母のように祖国を愛し、祖国のために戦える人になってください」
- 午後:専用バスで哈爾濱を出発し、瀋陽へ移動。
- 918記念館へ
- バスで移動…満州事変現場へ
- 夜は友好連の田雪さんと瀋陽の街を視察。
■5日目(4月25日 金曜日)
- 瀋陽にて朝食後、撫順へ移動。
- 平頂山記念館・撫順戦犯管理所を視察し、歴史的背景と日中関係の現状を再度考察。
- その後、瀋陽市内を視察(長崎の鐘)後、新幹線にて大連へ移動。
■6日目(4月26日 土曜日)
- 朝食後、大連空港へ向かい、CA953便にて11:20 大連を出発
- 14:10 福岡に帰着
【訪中報告書:731部隊跡地とハルビン視察から見えた新時代の兆し——訪中が問いかける過去と明日】
■はじめに:731部隊跡地訪問と歴史への想い
今回の訪中にあたり、私はハルビン市内にある旧日本陸軍731部隊の跡地を訪問し、かつてこの地で行われた非人道的行為の痕跡を目の当たりにした。731部隊罪証陳列館(資料館)の展示は、想像を絶する人体実験や細菌兵器の研究が行われた史実を克明に伝えており、閲覧者に強い衝撃を与える。日本人として、その事実を直視せずに済ますことは許されないと痛感した。
見学の最中、資料館の敷地内にある椅子で休んでいた際、中国人の若い男性から声をかけられた。「日本人ですか?」「何のためにここに来たのですか?」と問われ、私は「政治家として視察に来たが、歴史を反省し、二度と同じ過ちを犯さないために友好関係を築きたい」という正直な思いを伝えた。彼は静かにうなずき、言葉を残さずに立ち去っていったが、その無言の姿は、歴史の重みを改めて突きつけられるようでもあった。
その夜、同行していた牧瀬議員とともに市内を散策し、偶然入った茶館(茶屋)で同世代の中国人男性と出会った。和やかに会話が進むうち、私がその日に731部隊の資料館を訪れたことを話すと、彼は急に言葉を詰まらせ、しばし沈黙が続いた後、「先輩たちが犯したことを思うと、忘れることも許すこともできません」と厳粛な面持ちで語った。私たちはなぜここに来たのか、実際にどう感じたのかを互いに伝え合い、深い話を重ねた。その後、彼は「中国の人々は、日本のことをどう見ているのか」という問いに対し「日本もとても素敵な国だ」という率直な思いを語り、最後に男性は日本の同世代に向けて「歴史をしっかり学んでください。そして、アメリカの支配から脱却し、二度と戦争をしないよう、私たちの世代で友好を築きましょう」と呼びかけた。その真摯な言葉に、私も胸が熱くなり、涙をこらえるのがやっとだった。
この訪問を通じて改めて感じたのは、中国の若い世代が抱える歴史への複雑な感情と、同時に日本との協力関係に対する大きな期待である。日本が犯した過去の侵略行為に対する強い記憶がある一方で、技術や経済、文化面での協力を進めることで、互いにウィンウィンの未来を開いていきたいという思いが感じられる。本報告書の後半では、こうした歴史認識や若者の対話を踏まえつつ、日中が直面する政治・経済課題について整理し、今後の提案を示していく。
■日中双方が直面する政治・経済面の課題
今回の訪中においては、日中双方が直面している政治・経済面の課題について意見交換を行うとともに、地域の安定と発展に関して多角的な協力を模索する機会を得た。特に、中国側(華語シンクタンク)の皆さまが我々に強調したのは「米中貿易摩擦の影響緩和に向けた協力の必要性」と「アジア地域の平和的環境整備にむけた協調的取り組み」の二点である。中国は、トランプ前政権による追加関税(いわゆる“トランプ関税”)が残した負の影響に依然苦慮しており、日中双方が協力して、アメリカ主導の保護主義的な動きに対して柔軟かつ建設的な経済連携モデルを提示していく重要性を強調していた。
まず、現状の課題としては大きく三つが挙げられる。
(1)「トランプ関税」による負担が米中を中心とするグローバル・サプライチェーン全体に波及していることである。日本企業も一部の輸出入品目で関税負担増の影響を受け、中国市場でのコスト高や市場競争力の低下が懸念される。
(2)安全保障面においては、各国が国防力強化を進める中で、地域の軍拡競争が懸念されている。日中間でも防衛関連費の増額や新型装備の開発が相次ぎ、偶発的な衝突や誤解を避けるための対話メカニズムの整備が不十分といえる。
(3)コロナ禍を経て世界各国が経済再生に注力している現状下で、国際政治のパワーバランスが流動化し、域内諸国間の連携ルール構築が急務となっている。こうした背景から、中国側は日本に対し、技術交流や投資の拡大、連携強化など具体的な協力の可能性を打診している。
■今後の提案:トランプ関税対策・防衛費再考・歴史を踏まえた平和構築
1)トランプ関税対策
日本は米中双方とバランスを取った外交努力を継続しつつ、アジア域内のサプライチェーン強化を牽引する役割を果たすことが重要である。具体的には、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)や日中韓FTAなどを軸に、域内での関税・非関税障壁の段階的な撤廃を加速し、企業の負担を和らげると同時に貿易相手国を多角化する。さらに、高付加価値技術の共同研究や環境エネルギー分野での協力を進めることで、米中摩擦の影響を受けにくい新たな産業を育成する。これにより、トランプ関税の残滓ともいえる保護主義的傾向への対処と、将来の成長戦略を同時に実現できると考えられる。
2)防衛費を含む安全保障政策の再検討
中国は経済成長に伴い軍事力を急速に近代化しており、日本も防衛予算の増額方針を示している。しかし、拙速な軍拡競争は地域の緊張を高めるリスクが高い。もし日本が防衛費を増やすのであれば、それは「軍縮や平和的解決のための外交努力」「軍事行動の透明化」を同時に進めることとセットであるべきだ。具体策としては、ホットラインの設置や相互視察などの信頼醸成措置、軍縮ロードマップの策定、東シナ海・南シナ海等での衝突防止メカニズムの強化が挙げられる。また、防衛費の一部を「災害救援・人道支援の強化」や「国際平和維持活動のための能力向上」に振り向けるなど、軍事一辺倒ではない防衛費の在り方を提示することが、日本の真の平和貢献を示す道になると考える。
3)歴史を踏まえた平和構築と世代間交流の強化
731部隊の跡地を訪れた私自身の体験が示すように、歴史を正しく学び、それを踏まえた対話を深めることが、相互理解の基盤となる。過去の非人道的行為を反省し、それを繰り返さないための努力を日中が共同で行うことで、真の和解と未来志向の友好関係が育まれる。若い世代の間で偏見や敵意が生まれるのは「無知」や「恐れ」からであり、それを解消するには、教育・交流の充実が不可欠だ。大学間の学術連携や青少年交流プログラム、SNSやオンライン学習を通じた歴史認識の共有など、多角的な取り組みが有効と考えられる。
■結び:アジア全体の平和と繁栄に向けて
以上の提案を踏まえて、今後は日中間のみならず、米国やその他のアジア諸国とも多国間で調整を深め、貿易・投資・安全保障の一体的な枠組みづくりを推進していくことが肝要である。トランプ関税の影響に対しては、域内連携の強化や技術革新による付加価値向上策で緩和を図り、防衛費については外交努力と軍縮交渉を柱とした「平和型の戦略的投資」として再定義することを目指したい。
今回の訪中において感じ取ったのは、歴史的な痛みを抱えつつも、今後の平和と発展を願う多くの中国の人々の声である。その声に応えるためには、日本側も過去の過ちに正面から向き合い、再び同じ過ちを繰り返さないという決意を行動で示すことが欠かせない。そして、日中間の協力を広げることは、米中間の対立緩和にも寄与する可能性を持っている。今、アジア地域で必要なのは、単なる軍事的均衡ではなく、経済・安全保障・人材育成など、多角的な面での協調と信頼醸成である。
ハルビンで出会った青年たちの「歴史をしっかり学んでください。そして、二度と戦争をしないよう、私たちの世代で友好を築きましょう」というメッセージは、私たちに与えられた責務を明確に指し示している。政治家として、そして同じ時代を生きる人間として、このメッセージを重く受け止め、日中双方がともに平和を追求し、さらに繁栄を共有していくための一歩を踏み出したい。
本報告書が、日中両国のみならずアジア全体における新たな協力と平和への道筋を探る一助となることを切に期待する。
以上
筑紫野市議会 春口あかね