筑紫野市議会広報委員会
行政視察研修報告書
議会広報におけるAI活用及び紙・WEB媒体の再設計について
視察先 茨城県取手市
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| 日 時 | 令和8年8月4日(火)午前9時30分 |
| 場 所 | 取手市役所議事堂 大会議室 |
| 研修テーマ | 議会広報、AI要約、紙・WEB媒体の役割分担、アクセシビリティ等 |
| 作 成 | 筑紫野市議会広報委員会 副委員長 春口あかね |
本報告書の作成にあたって
本報告書は、取手市から事前に提供された視察研修資料、当日の音声認識結果及びAI要約、取手市概要資料、当日の記録並びに参加者アンケート等をもとに作成したものである。
今回の視察研修で特筆すべき点は、AI活用について説明を受けるだけの研修ではなく、研修そのものにAIを実装し、参加者がその有用性を体験できる形で進められたことである。
研修冒頭にはAI音声認識システムが稼働し、発言者がマイクを使用することで発言内容がリアルタイムに文字化された。さらに、その音声認識結果については後日議会事務局へ提供することが説明され、参加者に対しては、記録のためにメモを取ることに集中するのではなく、画面を見ながら説明を聞き、内容を理解し、考え、議論することに集中してほしいとの趣旨が示された。
これは、今回視察したAI活用の本質を象徴するものであった。
すなわち、AIの目的は、人間の仕事を単純に置き換えることではなく、記録、文字起こし、要約などAIが担うことのできる作業をAIに任せることで、人間が「聞く」「考える」「判断する」「対話する」といった、人間にしかできない部分により多くの時間を使えるようにすることにある。
実際、取手市議会では、一般質問1人分の広報原稿作成について、従来は平均1~2時間程度を要していた要約作業が、AIでは約1分、広報原稿として整えるまで含めても約15分程度に短縮されている。また、事務局職員の時間と労力、締切りに追われる心理的負担についても「50%以上」削減されたとの説明があった。
今回の研修でより印象的であったのは、AI活用というテーマを入口としながら、研修全体が「議会広報とは何か」「議員活動と議会活動は何が違うのか」「誰のために議会だよりを発行するのか」「市民に何を伝えるべきなのか」、さらには「そもそも議会は何のために存在するのか」を考えさせる構成となっていたことである。
研修は一方向の説明に終始するものではなく、冒頭から参加者への問いかけや簡単な思考課題が組み込まれた。特に、同じ問題に対して異なる答えを出す参加者がいることを示しながら、「皆が同じ見方をするのではなく、異なる角度から物事を見る人が議会には必要である」との趣旨が示された。これは、多様な市民から選ばれた議員が、それぞれ異なる視点を持ち寄り、議論を通じて意思決定を行う議会の本質そのものを考えさせるものであった。
さらに研修では、取手市議会が一般質問を紙の概要版に掲載せず、議会として行った議論や意思決定を中心に伝えている理由についても説明があった。「本来議会は自分のことをお知らせするのではなく、議会全体のことを知らせ、市民に理解してもらうことが重要」との考え方が示され、行政が「何を決めたか」を知らせるのに対し、議会広報では、その手前にある「どのような議論を行い、なぜ賛成・反対し、どのような過程を経て意思決定したのか」を市民に伝えることが重要であるとの説明がなされた。
この考え方は、従来の議会だよりを単に効率よく制作するという「業務改善」の視点にとどまらない。
紙面をAIで早く作ることが目的なのではなく、AIによって生み出された時間を、議論、市民との対話、政策形成、情報発信の質の向上に振り向ける。そして、議会広報そのものを「議員を知らせる広報」から「議会の議論と意思決定を市民に伝え、市民と議会をつなぐ広報」へ転換していく。
今回の視察は、その意味で、AI活用、デジタル化、議会広報、住民参画、議会改革がそれぞれ独立した取組ではなく、相互に連動するものであることを学ぶ機会となった。
さらに、取手市議会では、議会基本条例に基づき、委員会の許可を得た場合に傍聴人が意見を述べる仕組みも設けられている。これは、市民の中には特定分野について議員以上に知見や経験を有する人もいることから、その意見を公式に議論へ取り入れることで、議論の充実と議会への信頼向上につなげるという考え方によるものである。
したがって、本視察は「議会広報におけるAI活用の先進事例を学ぶ」という当初の目的を大きく超え、議会の仕事を180度違う角度から見直し、「何を残し、何を変え、AIに何を任せ、人間である議員や職員は何に時間を使うべきなのか」を根本から考える研修となった。
参加者アンケートでも、回答者7人全員が研修を「とてもよい」と評価しており、「AIの活用が感動レベル」「議会だよりが誰のために、何のためにあるものなのか改めて考え直すことができた」「議会広報に対する固定観念があったが、改善すべきところが見えた」「議会改革についても学ぶことができた」といった意見が寄せられている。
本報告書では、こうした視察の趣旨を踏まえ、単に取手市議会のAIシステムや広報手法を紹介するのではなく、その背景にある議会改革の考え方を整理した上で、筑紫野市議会において何を導入し、何を議論し、今後の議会広報及び議会改革にどのようにつなげていくことができるのかという視点から報告する。
要旨
本視察は、議会だよりの編集にAIを活用している取手市議会の運用を学び、筑紫野市議会広報委員会における編集負担の軽減、情報発信の迅速化、紙とWEBの役割分担、住民への伝わりやすさ及び情報保障の向上につなげることを目的として実施した。
取手市議会の特徴は、単に生成AIを導入したことではない。会議録を基礎データとし、AIが要約・見出し案・文字数調整を行い、人が発言の重点、政策的な意味、掲載順、公平性を判断するという、編集工程そのものの再設計にある。AIによる自動生成結果はそのまま公開せず、元発言との対比確認、全議員への閲覧、事務局による校正を経て公表している。
| 視察で確認した4つの核心 ①AIは「人の代替」ではなく、要約等の定型作業を短縮し、人が判断・編集・市民への伝え方に時間を使うための道具である。 ②一般質問1人分の広報原稿は、従来平均1~2時間を要していたが、AI要約は約1分、原稿化まで約15分となり、時間・労力は50%以上減少したと説明された。 ③紙媒体の縮小・WEB版への重点化とAI導入は別の施策であり、効果と費用を分けて検証する必要がある。 ④筑紫野市議会では、広報委員会が最終責任を担う現行体制を維持したまま、過去会議録での検証、1号分の並行運用、KPI評価を経て段階導入することが適当である。 |
本報告書の結論
- AI要約の導入は、比較的小規模な費用で編集時間の削減が期待でき、優先度の高い検討事項である。
- ただし、導入前に「実際の発言のみを根拠とする」「元発言を必ず確認できる」「AIが作成した文章を人が承認する」等の運用基準を定める必要がある。
- 紙を直ちに削減するのではなく、紙面とWEBの目的を整理し、紙は全体像と入口、WEBは詳細・動画・会議録への導線という役割分担を検討する。
- まずは既刊号を用いた遡及テストを行い、次に1号分を現行方式と並行して作成し、時間、修正件数、誤り、公開までの日数、閲覧数等を比較する。
報告書の構成
| 1 | 視察概要 |
| 2 | 視察の目的・着眼点 |
| 3 | 取手市・取手市議会の概要 |
| 4 | 視察研修の詳細 |
| 5 | 主要数値の整理と効果試算 |
| 6 | 視察から得た主な示唆 |
| 7 | 筑紫野市議会への導入提案 |
| 8 | 想定されるリスクと対応策 |
| 9 | 広報委員会で今後協議すべき事項 |
| 10 | 総括 |
| 参考資料 | 視察後アンケート・使用資料一覧 |
※本報告書では、視察先の事実関係と、筑紫野市議会への提案・考察を区分して記載している。
1 視察概要
| 項目 | 内容 |
| 視察日 | 2026(令和8)年8月4日(火)午前9時30分 |
| 視察先 | 茨城県取手市 |
| 会場 | 取手市役所議事堂 大会議室 |
| 研修テーマ | 議会広報について(議会だよりの概要、AI要約、紙・WEB媒体、編集体制、情報保障、住民参画等) |
| 取手市側説明者 | 岩﨑弘宜 総務部次長兼情報管理課長(元議会事務局次長)、関 デジタル化推進室主幹 |
| 筑紫野市議会側出席者 | 赤司委員長、春口副委員長、佐々木委員、楢木委員、山本委員、吉村委員、小金丸議会事務局職員 |
| 主な研修方法 | 事前質問への回答、資料説明、AI音声認識・AI要約・会議録視覚化・答弁書作成支援の実演、質疑応答、参加型演習 |
出典:「福岡県筑紫野市議会広報委員会 視察研修次第」p.1~5、「音声認識結果」p.1~3。
1-1 事前質問の主な項目
筑紫野市議会からは、議会だよりの発行回数・単価・編集スケジュール、広報戦略、全世帯配布を行わない経緯、紙からWEBへの移行、AI要約の修正方法、AIによる時間削減と費用、職員負担、一般質問を紙面に掲載しないことへの意見、編集の役割分担、住民登場企画、障がい者への対応、傍聴人発言制度、「ひびき」の名称継承等について質問した。
出典:「視察研修次第」p.1~5。
2 視察の目的・着眼点
本視察では、AIの機能紹介だけではなく、AIを議会広報のどの工程に位置付け、誰が最終責任を負い、どのように正確性・公平性・情報保障を確保しているかを重点的に確認した。具体的な着眼点は次のとおりである。
(1) AI導入前後で、一般質問原稿の要約時間、編集時間、心理的負担がどの程度変化したか。
(2) AIが作成した文章を、元の会議録と照合できる仕組みがあるか。
(3) AIが拾いにくい発言の熱量、政策的重点、答弁のニュアンスを誰が判断するか。
(4) 発言していない内容の追加、誤要約、偏った強調を防ぐルールがあるか。
(5) 紙媒体とWEB媒体をどのように差別化し、若年層、高齢者、障がい者等への情報保障を両立しているか。
(6) 議会だよりを議員個人の広報ではなく、議会全体の活動を伝える媒体としてどう位置付けているか。
(7) 筑紫野市議会の広報委員会方式を維持したまま、どの部分を導入できるか。
| 視察目的の整理 「AIを使うか、使わないか」ではなく、「市民に正確で分かりやすい議会情報を、より早く届けるために、どの工程をAIに任せ、どの判断を人が担うべきか」を明らかにすることを本視察の中心課題とした。 |
3 取手市・取手市議会の概要
取手市は茨城県南端に位置し、東京・成田・つくばを結ぶ地域の中央に位置する首都圏近郊都市である。人口規模が約10万6千人であり、筑紫野市と比較検討しやすい自治体規模であることも、視察先としての意義が大きい。
| 指標 | 内容 |
| 人口 | 105,759人(令和8年4月1日現在) |
| 世帯数 | 53,122世帯 |
| 面積 | 69.94平方キロメートル |
| 令和8年度一般会計当初予算 | 499億1,000万円 |
| 議員定数/現員 | 条例定数24人/現員21人 |
| 議会事務局 | 実数7人 |
| 一般質問 | 一問一答方式、質問・答弁を含め60分以内、質問回数制限なし |
| 議会報 | 年4回+2年ごとの議会組織変更号。令和2年度からWEB版を公開し、紙の概要版も発行 |
| その他の情報発信 | 議会メール、FAX、Facebook、YouTubeによる本会議ライブ・録画配信 |
出典:「取手市の概要 令和8年度」p.4~9。
3-1 比較対象としての意義
人口規模が同程度であっても、取手市議会は、議会広報委員会を置かず議会事務局が企画・編集を担う点、紙の議会だよりを概要版に絞り一般質問をWEB中心に掲載する点など、筑紫野市議会とは制度・運用が異なる。この違いがあるからこそ、単純な模倣ではなく、目的と効果を切り分けて検討する必要がある。
4 視察研修の詳細
4-1 議会広報の基本理念と編集体制
取手市議会には議会広報委員会がなく、企画から編集・発行までを議会事務局職員が担い、発行責任者を議長としている。合併前の旧取手市、旧藤代町のいずれも事務局編集であり、合併後に議員編集を求める提案もあったが、「速く、公平公正に編集している」との評価から現行体制が継続されている。
独立した広報戦略計画は策定していないが、議会事務局の組織マネジメントシートに「市民にわかりやすい議会情報の発信」を重点事業として位置付けている。用字用語は共同通信社の「記者ハンドブック」を基本とし、その他は「どうすれば読んでもらえるか」「どうすれば読みやすいか」という市民視点を編集の基準としている。
出典:「視察研修資料」p.9~12、p.37~39。
| 筑紫野市議会との相違点 取手市は事務局編集方式である一方、筑紫野市議会は広報委員会が編集に関与している。したがって、取手市のAI活用を導入する場合も、最終的な掲載判断と政治的公平性の確認は広報委員会が担い、AIと事務局は作業支援を担う形が現実的である。 |
4-2 紙の概要版「ひびき」の仕様、費用及び配布方法
令和8年度の紙の概要版「ひびき」は、A3両面を二つ折りにしたA4判4ページ、全ページカラーで、定例号を年4回発行している。2年に1回、一般選挙・委員会改選期に臨時号を発行する。
| 項目 | 令和8年度の概要 |
| 発行回数 | 年4回。2年に1回、議会組織変更号を発行 |
| 発行時期 | おおむね1月15日、5月1日、7月15日、11月1日。臨時号は3月1日 |
| 規格 | A3両面・二つ折り、A4換算4ページ、全ページカラー |
| 発行部数 | 1回当たり10,000部 |
| 1回当たり費用 | 84,348円(印刷料50,776円、二つ折り等手数料33,572円) |
| 年間総額 | 337,392円 |
| 個別郵送 | 27件 |
| 配置先 | 公共施設、郵便局、駅、コンビニ、スーパー、病院等 |
| その他 | 議員による近隣等への配布、郵送希望者への対応 |
出典:「視察研修資料」p.5、p.16、p.24、「取手市の概要」p.8。
印刷後の二つ折り作業は障がい者団体に委託し、施設への配送にはシルバー人材センターを活用している。単純な外注費削減だけでなく、地域内の就労機会に結び付けている点も参考となった。
出典:「音声認識結果」p.9~10。
従前方式との費用比較
令和元年度は、タブロイド判の議会だよりを各38,000部発行し、新聞折込を行っていた。印刷製本費179万6,500円、折込手数料158万2,648円、合計337万9,148円であった。令和8年度の年間33万7,392円と比較すると、資料上は年間304万1,756円の議会費削減となっている。
| 重要な区分 年間約304万円の削減は、主として紙面規格、発行部数、新聞折込から施設配置等への変更によるものであり、AI要約システムによる削減効果とは別に評価すべきである。AI導入の効果を検証する際は、編集時間とシステム費を独立して測定する必要がある。 |
出典:「視察研修資料」p.6~8。
4-3 紙からWEBへの重点移行とメディアの役割分担
取手市議会は令和2年度からWEB版議会だよりを公開し、紙媒体でしか情報を入手できない人のために概要版を併存させている。全世帯への新聞折込を廃止した背景には、新聞購読件数の減少、全戸ポスティングの高コスト、若い世代がデジタル中心であること等がある。
紙の概要版は、議会として決定・審議した内容を簡潔に知らせる媒体とし、一般質問はWEB版、会議録検索、YouTube等で詳細に伝えている。これは、取手市議会が一般質問を「議員個人の活動」、議会だよりを「議会全体の活動を伝える媒体」と整理していることによる。これは取手市議会独自の広報哲学であり、筑紫野市議会で採用するかどうかは別途議論が必要である。
移行時の市民意見
| 区分 | 内容 |
| 電話相談 | 2件 |
| WEB問い合わせ | 2件 |
| 賛否 | 肯定的2件、否定的2件で同数 |
| 請願 | 「紙媒体の存続を求める請願」が令和2年第1回定例会に提出され、賛成少数で不採択 |
| 一般質問を紙に載せないことへの直接苦情 | 市民からの電話等によるものは基本的にないと説明 |
出典:「視察研修資料」p.18~22、p.34~35。
取手市では、紙媒体を完全に廃止するのではなく、紙での情報取得が必要な人には概要版、郵送、朗読CD-R等を残しつつ、詳細情報はWEBで提供している。紙対デジタルの二者択一ではなく、媒体ごとの役割分担を明確にした点が重要である。
4-4 AI音声認識による会議記録の基盤整備
研修当日は、参加者の発言をリアルタイムで文字化するAI音声認識システムが稼働していた。発言者はマイクを使用し、システムに話者を認識させることで、発言者名付きの文字起こしが画面に表示された。音声認識の精度は入力音声の明瞭さに左右されるため、マイク運用が前提となっている。
取手市議会では、過去の会議録テキストや音声データ、地域固有の地名・人名等を辞書登録し、日本速記協会の「標準用字用例」等も取り込むことで、議会特有の用語や表記の精度を高めている。AI要約を正確に行うためには、前段となる音声・会議録データの品質が重要であることが確認できた。
出典:「音声認識結果」p.3、p.27、p.31。
4-5 「議会だより作成支援サービス」の機能と運用
取手市議会が活用するシステムは、汎用的なチャットAIに毎回指示文を入力する方式ではなく、議会だより作成に特化した画面と処理手順を備えたサービスである。会議録テキストを読み込ませると、一般質問の質問・答弁を抽出し、見出し案、要約文、文字数等を自動生成する。
| 機能 | 運用内容 |
| 会議録の読込み | 音声認識結果又は会議録テキストを入力する。 |
| 自動要約 | 質問・答弁を整理し、議会だより用の短文を生成する。 |
| 見出し案 | テーマごとのタイトル候補を自動作成する。 |
| 文字数管理 | 指定文字数に合わせて文章を調整する。 |
| 原文対比 | 要約箇所を選択すると、元会議録の該当部分へ移動し、内容を照合できる。 |
| 掲載選択 | 複数の質問・答弁から、掲載する項目や順序を人が選ぶ。 |
| WEB掲載支援 | 作成した内容をWEB版議会だよりへ反映する。 |
出典:「音声認識結果」p.23~26。
AIと人の役割分担
AIは、会議録上で多く語られた内容や語句を抽出することはできるが、議員が特に強く問題提起した箇所、市長等が答弁で重点を置いた箇所、議論の政治的・政策的意味まで十分に理解することは難しい。このため、取手市ではAIの出力を基礎に、事務局職員が「どの質問を上位に出すべきか」「市民にとって何が重要か」を判断している。
つまり、職員の業務は「一から要約文を書く作業」から、「AIが整理した情報を確認し、発言の意味と優先順位を判断する編集作業」へ移行したと整理できる。
時間削減と費用
| 指標 | 取手市の説明 |
| 従来の要約時間 | 一般質問1人分(答弁を含む約1時間)につき、平均1~2時間 |
| AIによる要約 | 約1分 |
| 広報原稿までの作成 | 約15分 |
| 導入・運用経費 | 年額十数万円程度 |
| 職員負担 | 時間・労力及び締切に追われる心理的圧迫が50%以上減少 |
| 副次効果 | 議論をより早い時期に市民へ届けることが可能 |
出典:「視察研修資料」p.29~32。
| AI導入の本質 取手市の説明では、AIに任せられる要約作業を短縮し、職員や議員にしかできない判断、構成、市民への伝え方に時間を振り向けることが導入目的とされている。単なる省力化ではなく、広報の質を高めるための時間再配分である。 |
4-6 AI要約の修正、正確性及び公文書としての信頼性
初稿完成時には、議会事務局から全議員に閲覧・確認を促す。修正が必要な場合でも、「実際に発言している範囲」「事実に基づく範囲」に限定し、会議当日に発言していない内容を後から付け加えることは認めない運用である。
この運用は、議会広報が会議で行われた議論を市民に伝える公的記録の一部であることを明確にするものである。AI導入により文章作成が容易になるほど、元発言との照合、修正履歴、最終承認者を明確にする必要性は高まる。
また、記者ハンドブックや標準用字用例をシステム側に取り込み、表記ゆれを減らしている。人が毎回用字ルールを確認する負担を減らしつつ、一定の品質を保つ工夫である。
出典:「視察研修資料」p.27~28、p.38~39、「音声認識結果」p.22~27。
4-7 会議録視覚化システムと若い世代へのアプローチ
取手市では、一般的な会議録検索システムは専門用語が多く、住民にとって検索方法が分かりにくいとの問題意識から、AIが議論のテーマや発言の流れを視覚化し、関心のある項目から元会議録へ移動できる仕組みを試作した。
市内県立高校の生徒に操作してもらったところ、触ってみたくなる、分かりやすい、興味が高まるとの反応があったと説明された。議員ごとに、どの分野を継続して取り上げているかを可視化し、選挙公報やマニフェストとの関連を学ぶ政治教育への活用も構想されていた。
一方で、このシステムは協定に基づき無償で開発された試作品であり、製品化や更新に課題があるとの説明もあった。先進事例は、導入可能性だけでなく、保守・更新・継続性まで確認する必要がある。
出典:「音声認識結果」p.20~21。
4-8 障がい者等への情報保障
取手市議会では、紙の概要版の直接郵送、市民団体による朗読録音とCD-R配付、YouTubeの字幕、ホームページの読み上げ機能、委員会での全方位カメラ配信等を組み合わせている。読み上げで誤りが生じた場合は、事務局がデータを修正することを想定している。
全方位カメラは、傍聴者が見たい方向を選択でき、身体的理由等で議場に来ることが難しい人にも、委員会の様子をより臨場感をもって伝える目的で活用されている。
紙を残すことだけが情報保障ではなく、文字拡大、読み上げ、字幕、動画、郵送、音声媒体等を組み合わせることが重要である。デジタル化とアクセシビリティは対立概念ではなく、設計次第で情報保障を拡充できる。
出典:「視察研修資料」p.25~26、p.44~45、「音声認識結果」p.30~32。
4-9 傍聴人発言制度による住民参画
取手市議会基本条例には、委員会における傍聴人発言制度が設けられている。傍聴人から発言の申出があった場合、委員会が許可を判断し、認められれば発言席に移動して原則5分間の意見陳述を行い、その後、委員から発言者に質疑を行う。
制度の趣旨は、議員だけでは把握しきれない専門知識、当事者性、地域事情を議会の審査に取り入れ、議論の充実、住民参画、議会への信頼向上につなげることである。AIやWEBによる情報発信と、住民が議論に参加する制度を一体的に考えている点が参考となった。
出典:「視察研修資料」p.46~47、「音声認識結果」p.32~34。
4-10 追加実演:AI答弁書作成支援システム
研修の後半では、議会広報の範囲を超え、AIを活用した答弁書作成支援システムの実演も行われた。このシステムは、利用者が複雑なプロンプトを入力しなくても、画面上のボタン操作で想定質問、答弁案、再質問、関連資料等を生成できるよう設計されている。
| 機能 | 実演内容 |
| テーマ入力 | 一般質問のテーマ、質問要旨を入力する。 |
| 論点提案 | 想定される課題や追加の切り口を提示する。 |
| 答弁素案 | 挨拶等を除いた具体的な答弁内容を作成する。 |
| 再質問想定 | 答弁後に想定される再質問を提示する。 |
| 庁内資料参照 | 総合計画等を読み込み、関連箇所を抽出する。 |
| 先進事例 | 他自治体の事例を検索・要約し、答弁案に反映する。 |
| 過去会議録 | 同一・類似テーマの過去質問と答弁を検索する。 |
| 答弁のニュアンス | 推進、慎重、検討等の方向に合わせ文章全体を調整する。 |
出典:「音声認識結果」p.35~38。
この実演は、AIが質問者・答弁者の双方に論点を提示できる可能性を示した一方、同じAIが論点を標準化し、質問と答弁が似通うおそれも示唆する。導入する場合は、AIが提示した論点をそのまま採用せず、現場確認、市民相談、法令・統計の原典確認を人が行うことが不可欠である。
5 主要数値の整理と効果試算
| 指標 | 数値・内容 |
| 紙概要版の発行 | 年4回、1回10,000部、A4換算4ページ、フルカラー |
| 紙概要版の費用 | 1回84,348円、年337,392円 |
| 従前方式からの削減 | 年3,041,756円(資料上) |
| 個別郵送 | 27件 |
| AI要約前 | 一般質問1人分につき平均1~2時間 |
| AI要約 | 約1分 |
| 原稿化 | 約15分 |
| AIシステム費 | 年額十数万円程度 |
| 事務局負担 | 時間・労力、心理的圧迫が50%以上減少 |
| 視察アンケート | 7人全員が「とてもよい」 |
5-1 一般質問原稿作成時間の参考試算
取手市の直近5定例会の一般質問登壇者数は18人、18人、17人、20人、22人で、平均19人である。取手市の説明値を用い、1号当たりの要約・原稿作成時間を単純試算すると次のようになる。
| 区分 | 計算 | 概算 |
| 従来方式 | 19人 × 1~2時間 | 19~38時間 |
| AI活用後の原稿化 | 19人 × 15分 | 4時間45分 |
| 削減可能時間の目安 | 従来-AI活用後 | 14時間15分~33時間15分/1号 |
| 年間4号の場合 | 上記 × 4回 | 57~133時間程度/年 |
※上記は要約・原稿化のみの概算であり、写真選定、紙面構成、校正、委員会協議、印刷入稿等の時間は含まない。取手市が示した全体の負担軽減は「50%以上」であり、筑紫野市議会では現行作業時間を実測した上で比較する必要がある。
出典:一般質問登壇者数は「取手市の概要」p.7、AI作成時間は「視察研修資料」p.30~32。計算は本報告書による。
5-2 費用対効果を判断する際の留意点
- システム年額だけでなく、初期設定、固有名詞辞書、研修、セキュリティ確認、保守支援の費用を確認する。
- 削減時間を人件費だけで評価せず、公開の迅速化、再校正の減少、委員会で政策的な編集に使える時間の増加も評価する。
- 紙面再設計による費用削減と、AIによる編集時間削減を混同しない。
- 費用が小さくても、誤要約による信頼低下の影響は大きいため、正確性を最優先する。
6 視察から得た主な示唆
6-1 AI導入の成否は、AIの性能よりも業務設計で決まる
取手市の取組は、会議録の読込み、要約、原文対比、文字数調整、掲載選択、確認、公表までが一つの流れとして設計されている。汎用AIを単発で使うより、誰がどの段階で確認し、どのデータを根拠とするかを定めることが重要である。
6-2 「元発言に戻れること」が信頼性の核心である
AIの要約結果だけを読むのではなく、該当する会議録へ即座に戻って確認できることが、誤要約防止と説明責任の両面で有効である。導入要件として、根拠箇所の表示又はリンク機能を重視すべきである。
6-3 AIは発言の熱量や政治的意味を完全には判断できない
どの発言を見出しにするか、どの答弁を上位に置くかは、市民に何を伝えるべきかという編集判断である。これは広報委員会と事務局が担うべきであり、AIに委ねてはならない。
6-4 紙とWEBは競合ではなく、役割を分けることができる
紙は全体像、重要議案、結論、WEBへの入口として機能し、WEBは詳細、動画、会議録、検索、アクセシビリティ機能を担うことができる。紙の量を議論する前に、それぞれの目的を明文化すべきである。
6-5 若い世代への情報発信は、紙を作るだけでは届かない
視察後アンケートでは「紙だけを利用することは若い人たちを置き去りにしている」という指摘が印象に残ったとの回答があった。WEB版、短い動画、検索しやすい会議録等を組み合わせる必要がある。
6-6 アクセシビリティは媒体の数ではなく、利用可能性で評価する
紙、郵送、読み上げ、字幕、CD-R、動画等を利用者に応じて組み合わせることが重要である。紙を残すか否かだけでなく、誰がどの方法なら情報に到達できるかを確認する必要がある。
6-7 取手市の制度をそのまま移すのではなく、筑紫野市の責任体制に合わせる
取手市は事務局編集方式である。筑紫野市議会では、広報委員会が編集方針と最終承認を担う強みを生かし、AIは下書き・照合支援、事務局は運用・校正支援を担う形が適している。
6-8 視察参加者の評価
視察後アンケートでは、回答者7人全員が「とてもよい」と回答した。主な理由として、AI活用が「感動レベル」であったこと、紙とWEBの両立、一般質問を紙に掲載しない考え方、議会だよりが誰のため・何のためにあるかを考え直せたこと、AI活用による時間削減と費用面の有利性、議会改革全般への学び等が挙げられた。
出典:「【集計結果】福岡県筑紫野市議会視察研修アンケート」p.1~2。
7 筑紫野市議会への導入提案
以下は、取手市の視察内容を踏まえた筑紫野市議会への提案である。取手市の運用をそのまま採用するものではなく、広報委員会が主体となる現行体制、筑紫野市の情報セキュリティ、議会だよりの読者層、予算等に合わせて検討する必要がある。
7-1 導入の基本方針(案)
| 項目 | 基本方針(案) |
| 目的 | 編集時間を減らすこと自体ではなく、正確で分かりやすい議会情報を早く届け、政策的な編集・市民への伝え方に時間を使う。 |
| AIの位置付け | 下書き、要約、見出し案、文字数調整、表記統一、原文照合支援に限定する。 |
| 最終責任 | 広報委員会及び発行責任者が負い、AIは決定主体としない。 |
| 根拠 | 公開済み又は議会内部で確定した会議録・音声認識結果等を基本データとする。 |
| 媒体 | 紙を直ちに削減せず、紙・WEB・動画・音声の役割を整理する。 |
| 導入方法 | 過去号で検証し、1号分の並行運用を経て判断する。 |
7-2 優先してAIを活用する業務
| 段階 | 対象業務 |
| 第1段階 | 一般質問の質問・答弁要約、見出し候補、指定文字数への調整、元会議録との照合 |
| 第2段階 | 議案・委員会審査の論点整理、賛否討論の要点整理、用字用語の統一 |
| 第3段階 | WEB版の検索性向上、動画の章立て、字幕補助、会議録のテーマ別表示 |
| 将来検討 | 市民向けQ&A、やさしい日本語、音声読み上げ用文章、広報効果分析 |
初期段階では、政治的判断が比較的少なく、元会議録との照合がしやすい「一般質問の要約」から始めることが適当である。議案の評価、賛否の意味付け、委員会としての優先順位付け等は人が担う。
7-3 推奨する編集フロー(案)
| 工程 | 内容 | 主担当 | 確認事項 |
| 1 | 会議録・音声認識データの確定 | 事務局 | 発言者、固有名詞、数字を確認 |
| 2 | AIによる要約・見出し案作成 | AI/事務局 | 複数案を作成し、根拠箇所を表示 |
| 3 | 発言者確認 | 各議員 | 実際の発言範囲内で修正 |
| 4 | 編集判断 | 広報委員会 | 重要性、公平性、読みやすさ、紙面構成を判断 |
| 5 | 原文照合・校正 | 事務局+複数委員 | 数字、固有名詞、答弁のニュアンスを照合 |
| 6 | 最終承認 | 広報委員会/発行責任者 | 公開版を決定 |
| 7 | 公開・記録保存 | 事務局 | AI出力、修正履歴、最終版を保存 |
| 8 | 効果検証 | 広報委員会 | 時間、修正、誤り、閲覧数等を評価 |
7-4 段階導入スケジュール(案)
| 段階 | 期間の目安 | 実施内容 |
| 準備 | 1~2か月 | 現行作業時間の計測、目的・対象業務・責任者・利用ルールを決定 |
| 遡及テスト | 1か月 | 既刊号の会議録をAIで要約し、現行原稿と比較。誤り・抜け・時間を記録 |
| 並行運用 | 次号1回 | 現行方式とAI方式を同時に実施し、公開物は従来の承認手続を経る |
| 評価 | 発行後1か月 | 委員・事務局の作業時間、市民アンケート、WEB閲覧等を集計 |
| 本格導入判断 | 年度内を目安 | 継続、対象拡大、契約、予算化を広報委員会で協議 |
| 最初のテストは過去会議録で行う 公開前の実案件から始めるのではなく、既に発行済みの議会だよりと確定会議録を使い、AI要約の正確性、表現、文字数、作業時間を比較する。これにより、市民への誤情報リスクを生じさせずに性能を確認できる。 |
7-5 導入効果を測るKPI(案)
| 評価軸 | 測定項目 | 目標・考え方 |
| 作業時間 | 議員1人分、1号分、年間の要約・校正時間 | 初回30%以上削減を目安とし、基準値測定後に設定 |
| 公開速度 | 閉会日から初稿・発行・WEB公開までの日数 | 前号比で短縮 |
| 正確性 | 数字・固有名詞・意味の誤り件数 | 重大な誤り0件 |
| 根拠確認 | 掲載文が元発言にひも付く割合 | 100% |
| 修正量 | AI初稿から最終稿までの修正文字数・修正回数 | 継続的に減少 |
| 公平性 | 議員間の文字数・掲載基準のばらつき | 基準に適合 |
| 閲覧 | WEB版PV、QRアクセス、動画視聴、滞在時間 | 基準値設定後に目標化 |
| 読者評価 | 分かりやすさ、読みたいテーマ、利用媒体、年代 | 紙・WEB双方で調査 |
| 費用 | システム、印刷、配送、作業時間の総コスト | 媒体別・工程別に把握 |
7-6 システム選定時に確認すべき要件
(1) 会議録等の根拠箇所を表示し、要約文から原文へ戻れること。
(2) 入力データを事業者のAI学習に利用しない契約条件を確認できること。
(3) 利用者ごとの権限、操作履歴、修正履歴を保存できること。
(4) 人名、地名、施設名、議会用語等の固有名詞辞書を登録できること。
(5) 指定文字数、用字用語、表記ルールを設定できること。
(6) Word、テキスト、HTML等で出力でき、特定事業者に過度に依存しないこと。
(7) 日本語の要約精度だけでなく、数字、否定表現、条件付き答弁の再現性を確認できること。
(8) 障がい者への情報保障に資する読み上げ、字幕、やさしい表現等への拡張性があること。
(9) 自治体・議会での導入実績、障害時の支援、保守、データ削除手順を確認できること。
(10) 試用環境又は短期間の実証が可能であること。
7-7 議会広報AI活用ルール(たたき台)
| 番号 | ルール案 |
| 1 | AIは補助ツールであり、掲載内容の最終責任は広報委員会及び発行責任者が負う。 |
| 2 | 原則として、確定した会議録、音声認識結果、議案資料等の確認可能な資料を入力する。 |
| 3 | 未公表の個人情報、相談内容、機密情報を、承認のない外部AIに入力しない。 |
| 4 | AI生成文は必ず元資料と照合し、数字、固有名詞、否定・条件表現を重点確認する。 |
| 5 | 会議で発言していない内容を追加しない。表現修正は発言の趣旨を変えない範囲とする。 |
| 6 | 掲載項目、見出し、順序、強調は、人が公平性と市民への重要性を判断する。 |
| 7 | AI出力、修正履歴、最終稿を保存し、後から検証できるようにする。 |
| 8 | 誤りが判明した場合の訂正手順、責任者、公表方法を定める。 |
| 9 | 紙・WEB・動画・音声の各媒体で、情報格差を生じさせないよう配慮する。 |
| 10 | 少なくとも年1回、精度、費用、利用状況、住民評価を検証し、ルールを見直す。 |
7-8 役割分担(案)
| 主体 | 役割 |
| 広報委員会 | 編集方針、掲載基準、紙・WEBの役割、最終承認、効果検証 |
| 委員長・副委員長 | 工程管理、委員間調整、事務局・事業者との連絡 |
| 各委員・発言議員 | 要約内容の確認、発言趣旨の保持、修正提案 |
| 議会事務局 | データ準備、システム操作、原文照合、用字校正、記録管理 |
| 情報担当部門 | セキュリティ、契約、アカウント、ネットワークの確認 |
| 事業者 | システム提供、保守、障害対応、データ管理の説明 |
| AI | 要約、候補作成、文字数調整、表記支援。最終決定は行わない |
7-9 市民アンケートの実施方法(案)
取手市では広報方式変更時にアンケートを実施していないが、研修では、アンケートを行う場合は結論を正当化するためではなく、議論の根拠となるよう設問設計を行う必要があるとの助言があった。筑紫野市議会で実施する場合は、現在の読者だけを対象とせず、紙を読まない若年層やWEBを利用しにくい層を含めることが重要である。
- 紙面にQRコードを掲載し、WEB回答を受け付ける。
- 公共施設等で紙回答も受け付け、デジタル利用者だけに偏らせない。
- 年代、利用媒体、議会情報への関心度を把握する。
- 「読んだことがあるか」だけでなく、「前号の内容を一つ答えられるか」「どの情報が役立ったか」を確認する。
- 現行版とAI要約版を比較し、分かりやすさ、正確さ、読みやすさを評価してもらう。
8 想定されるリスクと対応策
| リスク | 具体例 | 対応策 |
| 誤要約・事実誤認 | 数字、否定、条件、主語を誤る | 元会議録との対比、複数人校正、重大誤り0件をKPI化 |
| 発言していない内容の追加 | 読みやすさのために趣旨を拡張する | 発言範囲内に限定し、根拠箇所を保存 |
| 重要論点の欠落 | 発言量の少ない重要な指摘をAIが落とす | 複数要約案を出し、委員が重点を選択 |
| 公平性の偏り | 議員・会派ごとに見出しや文字量が偏る | 文字数、掲載順、修正基準を事前に統一 |
| 個人情報・機密情報 | 未公表資料や相談内容の外部送信 | 入力禁止情報を明確化し、契約・権限管理を確認 |
| 責任の曖昧化 | 「AIが書いた」として責任が不明になる | 最終承認者を明記し、AIは補助と規定 |
| AI依存 | 要約・編集能力が低下する | 定期的な手作業検証、研修、レビューを継続 |
| 事業者依存 | 契約終了時にデータ・ノウハウが残らない | 標準形式で出力、データ移行、契約終了時の返還・削除を規定 |
| 情報格差 | WEB中心化で利用できない人が取り残される | 紙、郵送、音声、字幕、窓口等を併存 |
| 導入目的の形骸化 | AI導入自体が目的になる | KPIと市民評価で毎年見直す |
8-1 特に注意すべき「答弁のニュアンス」
行政答弁には、「実施する」「検討する」「慎重に検討する」「現時点では困難」等、政策姿勢の違いが表れる。AIが文章を短くする際、この差を弱めたり、逆に強めたりすると、議論の意味が変わる。要約時には、結論、条件、期限、主体、根拠を必ず残すチェック項目が必要である。
8-2 AI活用を公表する考え方
AIを使用したこと自体を過度に強調する必要はないが、市民から問われた際に、どの工程でAIを使い、誰が確認し、どのように正確性を確保したかを説明できる状態にしておくべきである。透明性は、AI導入への信頼を高める。
9 広報委員会で今後協議すべき事項
(1) AI導入の第一目的を、作業時間削減、発行の迅速化、WEB閲覧増、分かりやすさ向上のうち、どこに置くか。
(2) 一般質問を紙面に掲載する現行方針を維持するか。紙とWEBで掲載内容を変えるか。
(3) AIを利用する対象を、一般質問だけにするか、議案・委員会審査まで広げるか。
(4) 広報委員会、発言議員、議会事務局、発行責任者の確認範囲をどう定めるか。
(5) 入力してよい資料、入力してはならない情報をどう区分するか。
(6) 元会議録との照合機能、履歴保存、固有名詞辞書等を必須要件とするか。
(7) 試行に充てる予算上限、実証期間、対象号をどう設定するか。
(8) 紙、WEB、動画、音声、SNSの読者層と役割をどう整理するか。
(9) 広報アンケートをどの対象・方法で行い、結果をどのように意思決定に用いるか。
(10) 導入後、どのKPIを用いて継続・拡大・見直しを判断するか。
| 次回委員会での提案事項 ①現行の編集工程と所要時間の可視化、②過去会議録を用いたAI要約の試行、③AI活用ルール案の協議、④紙・WEBの役割と読者調査の設計、の4点を議題化することが望ましい。 |
10 総括
取手市議会のAI活用は、議会だよりを自動で作らせる取組ではなく、会議録に基づく要約作業をAIに支援させ、人が市民に伝えるべき論点を判断するための取組であった。一般質問1人分の要約が平均1~2時間から約1分、原稿化まで約15分となり、年額十数万円程度の経費で、時間・労力・心理的負担が50%以上軽減されたとの説明は、筑紫野市議会にとっても十分検討に値する。
一方、AIが発言の熱量、政策的優先度、答弁のニュアンスを完全に理解することはできない。議会広報は、市民の判断材料となる公的情報であり、誤りや偏りは議会への信頼に直結する。したがって、AIの導入は、元発言との照合、発言範囲内での修正、最終責任者の明確化、個人情報・機密情報の保護、紙とデジタルの情報保障を前提としなければならない。
筑紫野市議会では、広報委員会が編集方針と最終判断を担う現行の強みを維持しつつ、AIを要約・見出し・文字数調整・表記統一・原文照合の補助として導入することが適当である。まず既刊号による遡及テストを行い、次に1号分を並行運用し、時間、正確性、修正量、市民の分かりやすさ、WEB閲覧等を数値で評価した上で、本格導入を判断すべきである。
AIによって生み出された時間を、議会の議論を深く読み直すこと、市民が何を知りたいかを考えること、より分かりやすい紙面・WEB・動画を作ることに充てられるのであれば、AI活用は単なる事務効率化を超え、議会への理解と信頼を高める可能性を有する。
参考資料1 視察後アンケートの概要
回答者7人全員が「とてもよい」と回答し、「よい」「普通」「悪い」「とても悪い」は0人であった。自由記述の主な内容は次のとおりである。
- AIの活用が非常に進んでおり、強い印象を受けた。
- 紙だけの利用は若い世代を取り残すという指摘が心に残った。
- 一般質問は議員活動、議会だよりは議会全体のことを伝えるという考え方に納得した。
- 議会だよりが誰のため、何のためにあるかを考え直す機会となった。
- AIによる広報原稿作成は、時間を大幅に削減し、費用面でも有利であると分かった。
- 紙とWEBを両立し、各取組の根拠が明確である点に感銘を受けた。
- 広報に対する固定観念が変わり、AI活用に向けて検討したい。
出典:「【集計結果】福岡県筑紫野市議会視察研修アンケート」p.1~2。
参考資料2 使用資料・出典
| 番号 | 資料名 | 主な使用箇所 |
| 1 | 福岡県筑紫野市議会広報委員会 視察研修次第 | 日時、場所、事前質問項目 |
| 2 | (事前配布用)20260804福岡県筑紫野市議会視察研修資料 | 紙・WEB広報、AI要約、費用、編集体制、住民参画等 |
| 3 | 取手市の概要 令和8年度 | 人口、財政、議会、一般質問、議会報、情報発信等 |
| 4 | (音声認識結果)20260804筑紫野市議会行政視察 | 当日の説明、質疑、AI各システムの実演内容 |
| 5 | (AI要約)20260804筑紫野市議会行政視察 | 当日の議題・概要の整理 |
| 6 | 【集計結果】福岡県筑紫野市議会視察研修アンケート | 参加者評価、自由記述 |
以上