行政視察報告書
大和市文化創造拠点 シリウス
公共施設複合化・指定管理・ライフサイクルコストから
筑紫野市の公共施設再編を考える
| 本報告書の焦点シリウスを「成功した複合施設」として紹介するだけでなく、①確認済みの公式情報、②現地説明で得たが追加照会が必要な事項、③筑紫野市への分析・提案を明確に分けた。特に、建設費と年間運営費を混同せず、総合体育館整備と文化・図書・生涯学習・子どもの居場所を、施設単体ではなく公共施設ポートフォリオとして比較する。 |
視察実施 令和8年7月26日
作 成 筑紫野市議会議員 春口あかね
作成日:令和8年7月26日 / 公表資料確認基準日:同日
要約
| 1 「複合化」の本質は、同じ建物に入れることではなく、日常的な利用を相互に生む運営設計である。シリウスは、ホール、図書館、生涯学習、子どもの居場所を一体化し、目的の異なる利用者が同じ建物を回遊する。公演のない日も来館理由を生む図書館・交流・学習・子ども機能が、施設の「日常利用の核」となっている。 |
| 2 運営は単純な業務委託ではなく、6社共同事業体による指定管理である。大和市が施設を所有し、指定管理者「やまとみらい」が、利用受付、料金収受、事業企画、職員配置、設備管理、小規模修繕等を一体的に担う。図書館、ホール、学習、子育て、遊び、ビル管理の専門企業を組み合わせている。 |
| 3 公表収支は「シリウス単体」ではなく7施設合算であり、単体コストは追加照会が必要である。令和6年度の7施設合算収入は12億9,539万9,466円、うち指定管理料は10億7,200万8,739円(82.8%)。支出は12億9,554万1,386円で、差額は▲14万1,920円である。年間約294万人が利用するシリウス単体の指定管理料、光熱水費、修繕費、利用料金収入は公表資料だけでは分離できない。 |
| 4 次期5年間の指定管理料上限は54億8,963万2,000円であり、シリウス等の光熱水費は別枠で市負担となる。指定管理料だけを見て運営費と判断してはならない。大規模修繕、設備更新、建物保険、公共床に係る管理費等も含めたライフサイクルコストを把握する必要がある。 |
| 5 筑紫野市では、総合体育館の緊急性を認めつつ「機能複合の再点検」を基本計画前に行うべきである。筑紫野市の基本構想は、延床約1万㎡の総合体育館、キッズルーム、会議室、防災備蓄倉庫等を想定する。一方、他施設との一体整備・近接整備・ネットワーク運営は明示されていない。候補地と事業手法を固定する前に比較検討を挿入する余地がある。 |
| 6 筑紫野市に適するのは「全部を1棟」ではなく、機能の相性を見極めた二拠点・ネットワーク型も含む比較である。アリーナと本格ホールは音響・振動・駐車需要が競合しやすい。一方、子どもの居場所、健康、学習、交流、会議、防災、飲食、観光・大会案内はスポーツ拠点と相性がよい。文化・図書・生涯学習は近接又は別拠点とし、予約・広報・指定管理・データを一体化する案が現実的である。 |
| 7 「建設費」ではなく、50年間の総費用と公共的成果で比較する。建設費、用地費、金利、光熱水費、人件費、修繕、更新、解体までを含むLCCと、来館、滞在、健康、学習、子育て、孤立防止、防災、周辺消費等の成果を同じ比較表で評価する必要がある。 |
本報告書における情報区分
| 区分 | 内容 | 取扱い |
|---|---|---|
| A 確認済み | 大和市・筑紫野市の公式資料、指定管理者公表資料等で確認 | 事実として本文・表に記載 |
| B 現地資料確認 | 施設の公式パンフレット、現地説明資料、現地で確認した設備・運用 | 出典を「現地配布資料」と明示 |
| C 分析・提案 | 確認済み事実を基にした本報告書の比較、評価、筑紫野市への提言 | 「分析」「提案」と明示 |
| D 追加照会必要 | 音声メモ・手書きメモにあるが、定義・対象範囲・年度等が未確認 | 断定せず、照会項目に分離 |
目次
第1章 視察の目的と調査方法
第2章 大和市文化創造拠点シリウスの全体像
第3章 施設構成と「全館図書館」の運営思想
第4章 指定管理者制度と6社共同事業体の運営
第5章 金銭面の分析―何が確認でき、何が分からないか
第6章 利用実績と公共的成果
第7章 成功要因、限界、移植時の注意点
第8章 筑紫野市の現状と総合体育館構想との比較
第9章 筑紫野市への具体的提案
第10章 指定管理・事業手法・契約設計への提言
第11章 追加照会が必要な事項
第12章 議会・委員会での確認論点
資料編 照会文案、数値一覧、現地資料、出典一覧
第1章 視察の目的と調査方法
1 視察の目的
筑紫野市では、農業者トレーニングセンターの老朽化と狭隘化を背景に、新たな総合体育館の整備が優先的に検討されている。同時に、文化会館、図書館、生涯学習センター等も将来の大規模改修・更新を見据える必要があり、「体育館を先に単独整備するのか」「公共施設全体を横断して複合化・近接化を検討するのか」が重要な政策課題となる。
そこで、図書館、芸術文化ホール、生涯学習センター、屋内こども広場を一体化し、年間約300万人規模の利用を生み出している大和市文化創造拠点シリウスを視察し、施設整備の考え方、運営方式、財政負担、利用実績、周辺への波及、筑紫野市への移植可能性を整理した。
| 注意「年間約294万人÷7施設合算の指定管理料」のような計算は、分母と分子の対象が一致しないため行ってはならない。シリウス単体の費用対効果を論じるには、施設別管理会計の開示が必要である。 |
第2章 大和市文化創造拠点シリウスの全体像
2-1 施設概要(確認済み)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県大和市大和南一丁目8番1号 |
| 開館 | 2016年11月3日 |
| 敷地面積 | 9,378.19㎡ |
| 建物全体延床面積 | 26,003.33㎡ |
| 文化創造拠点部分 | 22,759.34㎡(指定管理対象面積は募集要項上22,904.53㎡) |
| 構造・階数 | SRC造・一部S造、地上6階・地下1階 |
| 中核機能 | 市立図書館、芸術文化ホール、生涯学習センター、屋内こども広場、地下駐車場・駐輪場 |
| 建物の位置付け | 再開発ビル「YAMATO文化森」の公共施設部分 |
出典:[Y1] 大和市「指定管理者による文化創造拠点等の運営について」/[Y3] 指定管理者募集要項
2-2 シリウスだけではない「7施設一体管理」
大和市の特徴は、シリウス1館のみを運営するのではなく、中央林間図書館、渋谷図書館、ポラリス、つきみ野・桜丘・渋谷の各学習センターを含む7施設を一体的に指定管理している点にある。施設を物理的に一棟へ集約しなくても、組織、予約、広報、人材、事業、図書物流、評価をネットワーク化することで相乗効果を生み出している。

図2-1 指定管理者「やまとみらい」が運営する7施設 出典:現地配布資料 [V1]
| 筑紫野市への示唆複合化は「全部を同じ建物へ移す」ことに限定されない。文化会館、図書館、生涯学習センター、スポーツ施設、子どもの居場所等を別棟又は別拠点で維持しながら、予約、利用者ID、広報、講座、職員研修、データ分析、指定管理を一体化する「ネットワーク型複合化」も選択肢となる。 |
2-3 整備経過の要点
| 時期 | 主な経過 |
|---|---|
| 2009年 | 再開発組合が公益施設を主体とした事業計画を提案 |
| 2011年 | 公益施設基本計画案の意見公募 |
| 2012~2013年 | 公益施設管理運営基本計画、保留床取得協定、権利変換計画認可 |
| 2014年 | 条例・財産取得・保留床取得費等を議会議決、指定管理者公募開始 |
| 2015年 | 指定管理者の指定を議会議決 |
| 2016年7月 | 再開発ビル竣工 |
| 2016年11月 | シリウス開館 |
出典:[Y5] 大和市「これまでの経過」
計画段階で施設管理運営基本計画を策定し、建物完成前に指定管理者を選定していることは重要である。完成後に「誰がどう運営するか」を考えるのではなく、運営を前提に設計・要求水準を組み立てたと評価できる。
第3章 施設構成と「全館図書館」の運営思想
3-1 階ごとの機能と筑紫野市への示唆
| 階 | 主な機能(現地資料) | 政策的な意味 |
|---|---|---|
| 1階 | メインホール1,007席、サブホール272席、ギャラリー、カフェ、図書 | 公演がない日もカフェ・図書で人を呼ぶ。サブホールは平土間化し用途を広げる。 |
| 2階 | 市民交流ラウンジ85席、社会・ビジネス分野図書、行政連絡所、イベント観光協会 | 仕事・学習・行政・観光を同じフロアで接続。ラウンジは1時間100円。 |
| 3階 | 屋内こども広場、0~2歳広場、育児相談、一時預かり、子ども図書、音楽スタジオ | 遊び場だけでなく相談・保育・本・音楽を一体化し、親子の滞在を支える。 |
| 4階 | 健康分野の図書、健康テラス、健康測定・相談、一般図書 | 「施設に出て来ること自体が健康」という考え方。福祉・健康施策の入口になる。 |
| 5階 | 調査・学習図書、静かな読書室77席 | 賑わいを許容する館内に、明確な静穏ゾーンを設けて両立させる。 |
| 6階 | ぷらっと大和218席、講習室、会議室、調理実習室、和室等 | 予約不要・飲食可能な交流と、予約室を組み合わせ、市民活動を支える。 |
出典:現地配布資料・現地説明 [V1]。席数等は最新運用変更の可能性があるため実施設計時は再確認。
3-2 「全館図書館」とは何か
シリウスでは、図書館の本を特定階に閉じ込めず、館内の各機能に図書を配置し、原則として1階から6階まで持ち運んで読める。図書を媒介として、ホール、健康、仕事、子ども、生涯学習をつなぐ考え方である。
- 各階のコンセプトに合わせ、分類を越えて関連資料を配置する。
- 自動貸出機等を活用し、利用者が館内の好きな場所で本を読む。
- 多少の会話や、ふた付き飲料を許容し、居心地と交流を重視する。
- 一方で5階に静かな読書室を設け、用途別ゾーニングで利用者ニーズを両立する。
3-3 子どもの居場所は「付帯」ではなく中核機能

図3-1 3階「大和こどもの国」 出典:現地配布資料 [V1]
屋内こども広場は、単なるプレイルームではない。0~2歳と小学校2年生までの空間を分け、プレイリーダー、育児相談、最大4時間の一時預かり、子ども図書、音楽スタジオを同じ階に置くことで、保護者の相談や孤立防止、子どもの文化・学習体験へ接続している。
| 筑紫野市への示唆総合体育館の基本構想にはキッズルームが盛り込まれているが、単なる託児・待機スペースに留めず、年齢別の遊び、相談、一時預かり、絵本・学習、親の休息を一体的に設計することで、「競技者の付添い」以外の親子にも日常的な来館理由をつくれる。 |
第4章 指定管理者制度と6社共同事業体の運営
4-1 結論:運営は「委託」ではなく指定管理
シリウスは大和市が所有する公の施設であり、市直営ではない。指定管理者「やまとみらい」が管理運営する。指定管理者制度では、単なる清掃や受付の業務委託と異なり、条例・協定・仕様書に基づいて、利用許可、利用料金の収受、事業企画、職員配置、日常管理等を包括的に担うことができる。
| 方式 | 概要 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 市直営 | 自治体が職員配置、利用許可、事業、維持管理を直接実施 | 政策反映はしやすいが、専門人材・柔軟な運営に限界が出る場合 |
| 業務委託 | 清掃、警備、受付等の一部業務を契約で発注 | 業務範囲が限定され、施設全体の収益・事業改善の裁量は小さい |
| 指定管理 | 議会議決を経て民間等を指定し、管理運営を包括的に実施 | 民間ノウハウと利用料金制を活用。ただし市の要求水準・監督・評価が重要 |
4-2 6社共同事業体「やまとみらい」
| 構成企業 | 主な専門分野 |
|---|---|
| 株式会社図書館流通センター | 代表企業、図書館運営・共同事業体の契約事務 |
| サントリーパブリシティサービス株式会社 | 芸術文化ホール、接遇・文化事業 |
| 株式会社小学館集英社プロダクション | 生涯学習、市民交流、スタジオ等 |
| 株式会社明日香 | 保育、一時預かり、子育て支援 |
| 株式会社ボーネルンド | 遊具・遊び環境、屋内こども広場 |
| 横浜ビルシステム株式会社 | 設備、清掃、警備、建物維持管理 |
出典:[Y6] やまとみらい「シリウスについて」及び現地説明 [V1]
4-3 運営ガバナンス
令和6年度事業報告では、統括責任者が主催する館長会議、代表企業が主催する「やまとみらいJV会議」、大和市との連絡調整会議を月次で実施し、専門委員会も設けている。複数社運営では、役割分担だけでなく、施設横断の意思決定と責任所在を明確にすることが不可欠である。
| 主体 | 役割 |
|---|---|
| 大和市 | 条例・要求水準、指定管理料、監督、評価、大規模修繕等 |
| やまとみらいJV会議 | 6社間の経営・契約・全体運営の調整(月次) |
| 統括責任者・館長会議 | 施設横断のサービス、事故、事業、利用者対応の調整 |
| 各施設・各専門企業 | 図書、文化、学習、子育て、設備等の専門運営 |
| 運営審議会等 | 候補者審査、運営評価、市民・専門的視点からの確認 |
出典:[Y2] 令和6年度事業報告・評価/[Y3] 募集要項
4-4 利用料金制と自主事業
利用者が支払う施設利用料は、条例の上限内で市の承認を得て設定され、指定管理者の収入となる「利用料金制」が採用されている。また、自主事業は原則として指定管理者の費用と責任で実施し、その収入も指定管理者に帰属する。これにより、稼働率、集客、サービス改善への動機を持たせる。

図4-1 現地配布資料に掲載された主な施設利用料金 出典:現地配布資料 [V1]
4-5 指定管理者の裁量と市の責任
- 施設全体の管理運営を第三者へ丸ごと再委託することは禁止されている。
- 市は年度計画・報告、月次報告、モニタリング、年度評価等で管理する。
- 需要変動は原則として指定管理者のリスクである。
- 通常の人件費・物価変動も原則指定管理者負担とし、急激な変動は協議対象とする。
- シリウス等の経年劣化による修繕は、1件130万円未満を指定管理者、一定額以上を市負担とする区分が示されている。
| 筑紫野市への示唆指定管理を導入するか否かより、要求水準・リスク分担・施設別会計・KPI・修繕基準・データ所有をどう設計するかが重要である。特に複合施設では、専門企業を束ねる統括責任者と、市側の横断担当組織が必要となる。 |
第5章 金銭面の分析 何が確認でき、何が分からないか
5-1 令和6年度収支(7施設合算)
| 12.954億円収入合計7施設合算 | 10.720億円指定管理料収入の82.8% | 12.955億円支出合計7施設合算 | ▲14.2万円収支差額ほぼ均衡 |
| 収入項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 指定管理料 | 1,072,008,739円 | 82.8% |
| 利用料金収入 | 132,386,133円 | 10.2% |
| 事業収入 | 56,407,234円 | 4.4% |
| 協賛金・補助金等 | 5,378,025円 | 0.4% |
| その他収入・駐車場等 | 29,219,335円 | 2.3% |
| 収入合計 | 1,295,399,466円 | 100.0% |
出典:[Y2] 令和6年度事業報告・評価。構成比は本報告書で算出。

図5-1 7施設合算の収入構成 出典:[Y2]を基に作成
| 支出項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| 人件費 | 958,795,455円 | 74.0% |
| 事業費 | 144,297,706円 | 11.1% |
| 事務費 | 77,431,378円 | 6.0% |
| 維持管理費 | 85,952,339円 | 6.6% |
| 修繕費 | 10,786,599円 | 0.8% |
| その他支出 | 18,277,909円 | 1.4% |
| 支出合計 | 1,295,541,386円 | 100.0% |
出典:[Y2] 令和6年度事業報告・評価。構成比は本報告書で算出。

図5-2 7施設合算の支出構成 出典:[Y2]を基に作成
収入の約83%を市の指定管理料が占めることは、図書館や無料交流空間を含む公共施設として自然な構造である。重要なのは「黒字化」ではなく、市費負担に対してどのような文化、学習、子育て、健康、交流、防災の成果を生んだかである。一方、利用料金・事業収入等で約17%を確保している点は、民間の事業運営を組み込む効果として評価できる。
5-2 次期指定管理期間の上限額
| 年度 | 指定管理料上限額(7施設合算) |
|---|---|
| 令和8年度 | 1,064,105,000円 |
| 令和9年度 | 1,077,507,000円 |
| 令和10年度 | 1,096,021,000円 |
| 令和11年度 | 1,119,044,000円 |
| 令和12年度 | 1,132,955,000円 |
| 5年間合計 | 5,489,632,000円 |
| 年平均 | 1,097,926,400円 |
出典:[Y3] 大和市文化創造拠点等指定管理者募集要項

図5-3 次期5年間の指定管理料上限額 出典:[Y3]を基に作成
| 別枠負担に注意次期指定管理では、シリウス、ポラリス、渋谷学習センター、渋谷図書館の光熱水費を指定管理料に含めず、大和市が別途負担する。したがって、指定管理料上限額だけでは年間公費負担を表さない。出典:[Y3] 募集要項 |
5-3 修繕・更新費の負担区分
日常的・小規模な修繕を指定管理者に負担させる一方、一定額以上の経年劣化修繕や大規模改修は市が負担する。開館から約10年が経過し、今後は空調、舞台音響・照明、エレベーター、図書システム、遊具等の更新が増える可能性がある。年間指定管理料だけでなく、長期修繕計画と設備更新台帳を確認する必要がある。
5-4 公表資料だけでは分からない金額
| 項目 | 現在の確認状況 | 対応 |
|---|---|---|
| シリウス単体の指定管理料 | 7施設合算のみ公表 | 最優先で照会 |
| シリウス単体の利用料金・事業収入 | 7施設合算のみ公表 | 施設別収支を照会 |
| シリウス単体の人件費・維持管理費 | 7施設合算のみ公表 | 共通費配賦方法も照会 |
| 光熱水費 | 次期は市別枠負担と確認 | 年度実績・㎡当たり・用途別を照会 |
| 大規模修繕・設備更新費 | 年度別の市予算が必要 | 10年間実績と今後30年計画を照会 |
| 建設・公共床取得の総額と財源 | 現地説明の数字は定義未確認 | 再開発事業、公共床、補助、市負担を分離照会 |
5-5 現地説明で示されたが、追加照会が必要な建設費等
総事業費の説明では「国・県・市65億円」「保留床148億円」「総事業費213億円」が示された。しかし、再開発事業全体、施設建設費、公共床取得費、補助金、権利者床、保留床処分金、市の実質負担が混在している可能性があるため、本報告書では確定値として採用しない。
| 追加照会の原則今後参考にする場合、建設費は、①再開発事業全体、②建物工事、③公共施設床の取得、④内装・什器・図書・システム、⑤用地・補償、⑥国県補助、⑦市債、⑧一般財源、⑨市の将来償還負担に分けて回答を求める必要がある。 |
第6章 利用実績と公共的成果
6-1 令和6年度の主要実績(確認済み)
| 293.9万人シリウス来館者計画285万人 | 94%ホール稼働率日数ベース | 23.2万人ホール来場者年間 | 17.9万人屋内こども広場過去最多 |
| 指標 | 実績 | 補足 |
|---|---|---|
| シリウス年間来館者 | 2,939,216人 | 計画2,850,000人を約8.9万人上回る |
| 暦日平均(参考) | 約8,053人/日 | 年間来館者÷365日。本報告書で算出 |
| 駐車場利用 | 59,059台 | 公共交通中心の立地だが車利用も存在 |
| 駐輪場利用 | 105,548台 | 自転車利用が駐車場を上回る |
| 芸術文化ホール来場 | 232,133人 | メイン・サブ等の合計 |
| ホール稼働率 | 94% | 目標87% |
| 文化芸術事業 | 25事業・15,030人 | 満足度98% |
| 屋内こども広場 | 179,016人 | 過去最多 |
| げんきっこ広場 | 83,813人 | 有料遊び場 |
| 一時保育 | 2,078人 | 最大4時間のサービス |
| 子育て相談等 | 1,016件・人 | 相談・講座等の合計 |
| スタッフ対応満足 | 84% | 7施設評価項目 |
出典:[Y2] 令和6年度事業報告・評価
6-2 来館者数だけでは測れない成果
シリウスの公共的価値は、貸館稼働率や図書貸出だけでは捉え切れない。子どもと保護者が遊び・本・相談・一時保育へ接続すること、高齢者が外出し人と交流すること、学生や会社員が学び・仕事を行うこと、市民団体が活動すること、ホール来場者が駅前や周辺店舗へ回遊することなど、複数政策にまたがる成果が生じる。
6-3 成果評価に必要なKPI
| 評価分野 | 指標例 |
|---|---|
| 利用 | 来館者、開館日、時間帯・年代・市内外別、リピート率、滞在時間 |
| 施設稼働 | ホール・会議室・スタジオ・学習席・遊び場の稼働率、予約不成立件数 |
| 文化・学習 | 事業参加、満足度、初参加率、学校・地域へのアウトリーチ |
| 子育て | 相談件数、一時保育、継続支援への接続、保護者の休息・孤立感 |
| 健康・福祉 | 健康相談、外出頻度、社会参加、フレイル・孤立防止への接続 |
| 公平性 | 障がい、低所得、子ども、高齢者、市外利用者等のアクセス |
| 地域経済 | 周辺通行量、滞在消費、地元調達、宿泊、イベント・大会経済効果 |
| 財政・環境 | 市負担、施設別収支、エネルギー、修繕、CO2、職員生産性 |
| 追加照会が必要な成果現地説明では「施設整備前後で周辺の人流が約4割増えた」との趣旨の発言があったが、調査地点、年度、平日・休日、実人数等を公式資料で確認できていない。経済波及を報告書や議会質問で使用する場合は、調査報告書の提供を求める必要がある。 |
第7章 成功要因、限界、移植時の注意点
7-1 成功要因
| 成功要因 | 内容 |
|---|---|
| 日常利用の核 | 図書、交流、学習、子ども、カフェにより、公演の有無に左右されない来館を生む。 |
| 目的の異なる人を混ぜる | 親子、学生、会社員、高齢者、文化団体が同一施設内を回遊する。 |
| 専門企業の連携 | 図書、ホール、学習、保育、遊び、設備管理の専門性を共同事業体に集約。 |
| 運営先行型 | 設計・完成前から管理運営基本計画と指定管理者選定を進める。 |
| ルールの柔軟性 | 会話、飲料、食事可能空間を設け、禁止一辺倒にしない。 |
| 静と動のゾーニング | にぎわい空間と静かな読書室を分け、利用者ニーズを両立。 |
| 駅前・交通結節 | 徒歩・鉄道・自転車でアクセスしやすく、周辺回遊を生みやすい。 |
| 7施設ネットワーク | 施設を越えた人材、事業、広報、物流、評価の一体管理。 |
7-2 限界・課題
- 成功による混雑:静かな読書席、学習席等で需要が供給を上回る時間帯がある。
- ホールは高稼働でも収益のみで維持できず、公共的価値と公費負担の説明が必要である。
- 7施設合算会計では施設単体の費用対効果が見えにくい。
- 複数企業の共同事業体は、調整コスト、責任分界、事業者交代時の継承が課題となる。
- 次期指定管理者募集は応募1団体であり、競争性・市場の厚みを継続的に確保する必要がある。
- 開館10年以降の設備更新・大規模修繕が増えれば、指定管理料以外の市負担が拡大し得る。
7-3 筑紫野市へそのまま移植できない理由
大和市は鉄道が市域を縦断する比較的コンパクトな都市で、シリウスは大和駅徒歩圏の再開発施設である。一方、筑紫野市の総合体育館構想は最大5.5万㎡程度の用地、平置き駐車場約500台を想定し、自動車アクセスと防災拠点性が強い。立地、交通、敷地、競技大会の動線が異なるため、シリウスのフロア構成をそのまま模倣するのではなく、運営思想と機能接続を移植すべきである。
| 移植すべきもの/移植しないもの移植すべき:日常利用の核、子ども・健康・学習・交流の接続、運営先行、施設横断管理、データ評価。 移植しないもの:駅前型の駐車場規模、全機能の高層一棟化、体育機能を持たない施設構成。 |
第8章 筑紫野市の現状と総合体育館構想との比較
8-1 筑紫野市の公共施設全体
| 129施設公共建築物345棟 | 22.6万㎡総延床面積令和7年12月末 | 52.9%築30年以上延床面積割合 | 2.12㎡/人市民1人当たり類似団体より少ない |
改訂公共施設等総合管理計画では、老朽化施設について減築、統合、周辺施設との集約化、PPP/PFIを検討する方針を示している。文化会館は1983年建築であり、公共施設全体の半数超が大規模改修期に入っている。
| 用途区分 | 総コスト | 注意 |
|---|---|---|
| 文化施設(1施設) | 81,031,066円 | 令和3~5年度平均 |
| 生涯学習センター(1施設) | 118,980,224円 | 同上 |
| 図書館(1施設) | 113,081,032円 | 同上 |
| スポーツ施設(4施設) | 53,013,313円 | 同上 |
| 上記合計 | 366,105,635円 | 対象・機能が異なるため単純削減額ではない |
出典:[C2] 筑紫野市公共施設等総合管理計画。総コストは一般会計・令和3~5年度平均。
上記は、施設複合化によって全額削減できる費用ではない。しかし、受付、警備、清掃、会議室、駐車場、空調、事務、人材、予約システム等の重複を比較するための基礎値となる。
8-2 農業者トレーニングセンターの課題
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建築年・規模 | 1982年、延床2,895㎡、築43年 |
| メインアリーナ | 1,433㎡、空調なし |
| 観客席 | 81席 |
| 避難所 | 二次避難所 |
| 大規模改修見込み | 11億7,000万円 |
| 空調追加 | 2億1,100万円(別途) |
| 改修+空調の単純合計 | 13億8,100万円 |
| 利用率 | 時間帯別で概ね71.1~89.7% |
出典:[C1] 筑紫野市スポーツ施設整備基本構想
8-3 新総合体育館の想定規模・費用
| 項目 | 基本構想の想定 |
|---|---|
| 延床面積 | 約10,000㎡ |
| メインアリーナ | 1,800㎡、固定席1,000席 |
| サブアリーナ | 1,300㎡、固定席200席 |
| その他 | 武道場、多目的運動室、トレーニング、卓球場、キッズルーム、会議室、防災備蓄倉庫等 |
| 体育館用地 | 約11,000㎡ |
| 最大用地 | 約55,000㎡ |
| 駐車場想定 | 平置き約500台(最大構成時) |
| 施設整備費 | 73.1~81.1億円 |
| 用地含む概算事業費 | 85.5~149.3億円 |
出典:[C1] 筑紫野市スポーツ施設整備基本構想

図8-1 用地規模別の概算事業費レンジ 出典:[C1]を基に作成
8-4 現構想における複合化の到達点
基本構想は、スポーツ施設の中にキッズルーム、会議室、防災備蓄倉庫等を入れる方向を示している。また、用地規模に応じてグラウンド、遊具広場、ウォーキングコース等を併設する。しかし、文化会館、図書館、生涯学習センターを同一敷地又は近接拠点として再編する比較案は、想定機能として示されていない。
| 政策判断の分岐点総合体育館の必要性と優先性は公式計画で整理されている。一方、「体育館を整備する」ことと「体育館だけを単独の政策領域として整備する」ことは別問題である。候補地と基本計画の前に、文化・図書・学習・子ども・健康・防災との機能接続を比較することが、将来の二重投資回避につながる。 |
8-5 シリウスと筑紫野市の条件比較
| 比較軸 | シリウス | 筑紫野市新総合体育館構想 |
|---|---|---|
| 立地 | 大和駅徒歩圏の駅前再開発 | 候補地未定。最大500台の駐車想定 |
| 主機能 | 図書・文化・学習・子ども | 競技・健康・防災 |
| 建物 | 高層・約2.28万㎡の公共部分 | 延床約1万㎡を想定 |
| 日常利用核 | 図書、交流、子ども、カフェ | 現構想ではスポーツ・運動が中心 |
| 管理 | 7施設を6社JVで一体指定管理 | 現施設も指定管理。新施設方式は今後検討 |
| 交通 | 鉄道・徒歩・自転車中心 | 自動車アクセスの比重が高いと想定 |
| 災害 | 公共施設としての機能 | 主要な指定避難所拠点を期待 |
| 複合化の方向 | 異分野4機能を中核化 | スポーツ内の多機能化が中心 |
第9章 筑紫野市への具体的提案
9-1 第一提言:基本計画前に「公共施設横断比較」を1工程追加する
現在の基本構想から候補地選定・基本計画へ進む前に、文化会館、図書館、生涯学習センター、子どもの居場所、健康・福祉、防災、観光・地域経済を含む機能横断比較を行う。体育館整備を止めるためではなく、将来の更新と重複投資を防ぎ、体育館の公共的価値を最大化するためである。
1. 対象施設の建築年、改修時期、利用、コスト、敷地、災害機能を同一様式で整理する。
2. 「同一建物」「同一敷地・別棟」「別拠点・一体運営」の3方式を比較する。
3. 建設費だけでなく、50年間のLCCと社会的成果を算出する。
4. 市民・利用団体・子ども・若者・障がい者・運営事業者・地元企業のワークショップを実施する。(子どもには特に、保育園やこどもが多く集まる民間施設へのアプローチも必要。)
5. 民間事業者へのサウンディングを行い、運営可能性と市場競争性を確認する。
9-2 機能の相性に基づく配置
| 配置方針 | 機能例 | 理由 |
|---|---|---|
| 同一建物に入れやすい | 子どもの居場所、健康相談、学習・仕事席、市民交流、会議室、飲食、観光・大会案内、防災備蓄 | スポーツ利用者以外の日常来館、家族滞在、共用が可能 |
| 同一敷地・別棟が有力 | 本格文化ホール、図書館、生涯学習センター | 音響・振動を分離しながら広場、駐車場、管理、会議室を共有 |
| 慎重に検討 | メインアリーナと本格音楽ホールの完全一体化 | 同時開催時の駐車、搬入、騒音・振動、天井・構造、避難動線が競合 |
| ネットワークで統合 | 既存の文化・図書・学習拠点と新体育館 | 予約、会員ID、広報、講座、データ、指定管理、シャトル等を一体化 |
9-3 3つの整備シナリオ
| 案 | 概要 | 利点 | 課題 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| A スポーツ単独強化型 | 基本構想を基礎に、競技・防災を中心に整備 | 早期整備しやすい。機能が明確 | 非利用者の日常来館が弱い。文化施設の将来更新と別投資 | 必要最小限案 |
| B スポーツ+日常生活拠点型 | 体育館に子ども、健康、学習、交流、飲食、観光・大会案内を加える | 世代横断、平日利用、家族滞在、防災時の多機能 | 床面積・運営体制・費用が増える | 現段階の推奨 |
| C 二拠点・ネットワーク型 | スポーツ・防災拠点と、文化・図書・学習・子ども拠点を分け、管理運営を統合 | 機能相性を保ち、全市的な複合化効果 | 計画調整、移動連携、段階整備が必要 | 中長期の本命 |
9-4 比較評価の100点基準(案)
| 評価項目 | 配点 |
|---|---|
| 安全・老朽化対応 | 12点 |
| 競技・大会機能 | 12点 |
| 防災拠点性 | 10点 |
| 日常利用・来館頻度 | 10点 |
| 子ども・若者の居場所 | 10点 |
| 文化・学習・健康の連携 | 10点 |
| 交通・市域アクセス | 8点 |
| 50年LCC・財政負担 | 15点 |
| 運営・市場性 | 6点 |
| 地域経済・地元受注 | 4点 |
| 将来拡張・転用性 | 3点 |
| 合計 | 100点 |
配点は政策判断のたたき台であり、スポーツ団体だけでなく、子ども、保護者、高齢者、文化団体、障がい者、地域、財政、防災の視点から公開して決定する。
9-5 総合体育館に追加検討すべき具体機能
- 予約不要の無料交流・学習スペース:電源、Wi-Fi、飲食可能ゾーン、静穏ゾーンを分ける。
- 子どもの年齢別屋内遊び場:0~2歳、幼児、小学生を分け、相談・一時預かりへ接続する。
- 健康・フレイル予防拠点:測定、保健師・管理栄養士相談、運動処方、介護予防講座を実施する。
- 地域図書・情報コーナー:スポーツ、健康、防災、子育て、観光、地域史を中心に選書し、図書館と物流連携する。
- 大会・観光・DMO連携窓口:宿泊、二日市温泉、飲食、交通、地元弁当、周遊を大会主催者へワンストップ提供する。
- 市民活動・会議・調理:大会運営、炊き出し、防災訓練、地域活動に共用できる部屋を設ける。
- 防災機能:非常用電源、空調、給水、備蓄、情報、ペット・要配慮者、授乳・更衣、温かい食事を設計段階から組み込む。
- 運営バックヤード:搬入、倉庫、清掃、職員休憩、ボランティア、メディア、選手・観客動線を分離する。
9-6 自由学習・交流スペースの改善機会
筑紫野市生涯学習センターの自由学習コーナーは48席、21時30分まで利用可能である一方、電源は利用できず、食事不可である。シリウスは、有料ラウンジと無料交流空間、飲食可能空間、静かな読書室を分けることで、多様な滞在ニーズを受け止めている。新施設又は既存施設再編では、禁止事項を一律にするのではなく、ゾーニングで解決する考え方が有効である。
| 提案無料席、有料集中席、会話・飲食可能席、静穏席、親子席を分け、電源・Wi-Fi・印刷等の付加価値に応じて料金を設定する。無料の公共性を維持しながら、運営財源と席回転を確保できる。出典:[C3] 筑紫野市生涯学習センター施設案内/[V1] シリウス現地資料 |
9-7 地域経済・観光への接続
新総合体育館は、競技施設に留まらず、スポーツツーリズムの入口となり得る。大会開催時の宿泊、温泉、飲食、交通、弁当、物販、観光周遊を地元事業者と一体化し、公共投資を市内経済へ循環させる。
- 地元調達率、市内事業者契約額、市内雇用人数をKPI化する。
- 大会主催者向けに宿泊・食事・輸送・観光のパッケージを用意する。
- 施設内飲食・売店は、地域産品や二日市温泉・観光情報と接続する。
- ネーミングライツは収入額だけでなく、市内企業・地域ブランドとの整合を評価する。
- DBO/PFIを選ぶ場合も、市内企業の参画、分離発注、地域JV、下請・調達情報の公開条件を設ける。
第10章 指定管理・事業手法・契約設計への提言
10-1 事業手法は、建設費だけでなく運営を先に設計して選ぶ
| 手法 | 概要 | 利点 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 従来方式+指定管理 | 市が資金調達し設計・工事を分離、完成後に指定管理 | 市意向・地元受注を反映しやすい | 運営ノウハウが設計に入りにくい |
| DB+指定管理 | 設計施工を一括、運営は別途指定管理 | 工期・施工技術を生かしやすい | 運営者と設計施工者の分断 |
| DBO | 市資金で設計・建設・運営を一括 | 運営を設計に反映、LCC最適化 | 長期契約、参入者限定、地元企業参画に工夫 |
| PFI(BTO等) | 民間資金・設計・建設・運営を長期一括 | 財政平準化、性能発注、長期維持管理 | 契約が複雑、変更困難、競争性・金融費用 |
出典:[C1] 筑紫野市スポーツ施設整備基本構想を基に整理
どの手法でも、基本計画前に運営計画を策定し、利用者動線、予約、料金、職員、清掃、搬入、災害、図書・子ども・健康連携を要求水準に落とし込むことが必要である。
10-2 指定管理協定に盛り込むべき条項
| 契約論点 | 提言 |
|---|---|
| 施設別管理会計 | 複合施設内の各機能と共通部門を分け、配賦基準を固定・公開する。 |
| 光熱水費 | 別枠市負担・指定管理料内包のどちらでも、削減インセンティブと異常変動ルールを設ける。 |
| 修繕基準 | 金額だけでなく、原因、緊急性、予防保全、更新時期を明確にする。 |
| 需要リスク | 市民利用を阻害する過度な収益化を防ぎつつ、利用増の成果を還元する。 |
| 利用料金・減免 | 低所得、子ども、障がい、学校、市民団体、市外利用の考え方を条例で明確化する。 |
| 利益・損失 | 過大な利益の分配、赤字時の責任、不可抗力・物価急騰の協議条件を定める。 |
| データ所有 | 予約、属性、満足度、事故、修繕、エネルギーのデータを市が継続利用できるようにする。 |
| 事業継承 | 事業者交代時の職員・ノウハウ・マニュアル・データ・システム移行を義務化する。 |
| 地元経済 | 市内調達、雇用、障がい者雇用、地域団体連携等を評価項目とする。 |
| 情報公開 | 年次報告を施設別に公開し、KPI未達理由と改善策を示す。 |
10-3 応募1団体を前提としない市場形成
大和市の次期指定管理者公募では応募が1団体であった。要求水準を満たすとして同じ共同事業体が選定されたが、大規模・複合施設は参入可能な事業者が限定されやすい。筑紫野市では、公募前のサウンディング、業務分割、地域企業との連携条件、十分な準備期間、既存運営データの開示により、競争可能性を確保する必要がある。
10-4 運営KPIの三層構造
| 層 | 指標例 |
|---|---|
| インプット | 市負担、人員、光熱、修繕、床面積、開館時間 |
| アウトプット | 来館者、稼働率、講座、相談、一時保育、大会、貸出、地域連携 |
| アウトカム | 健康、学習、子育て安心、孤立防止、文化参加、防災力、地域消費、定住満足 |
利用者数だけを目標にすると、混雑、無料利用の排除、特定世代への偏りが生じ得る。財政効率と公平性、社会的成果を同時に評価する。
第11章 追加照会が必要な事項
以下は、公表資料だけでは確認できない事項、又は現地説明・手書きメモの数字を議会資料として使用するために定義確認が必要な事項である。「優先A」は筑紫野市の比較検討に不可欠、「優先B」は政策評価を深める事項、「優先C」は設計・運営の詳細確認である。
| 優先 | 分野 | 照会事項 |
|---|---|---|
| A | 整備費・財源 | 再開発事業全体の最終総事業費と、その対象範囲は何か。 |
| A | 整備費・財源 | 公共施設部分(シリウス)の床取得費、内装・設備・什器・図書・ICTの各金額はいくらか。 |
| A | 整備費・財源 | 現地説明の「65億円」「148億円」「213億円」は、それぞれ何を指すか。年度・税込/税抜を含めて確認したい。 |
| A | 整備費・財源 | 国庫補助、県補助、市債、一般財源、基金、権利床・保留床処分金の内訳はいくらか。 |
| A | 整備費・財源 | 市の実質的な一般財源負担と、市債の発行額・償還期間・現在残高はいくらか。 |
| B | 整備費・財源 | 再開発方式を選択した場合と市単独整備の場合の比較、VFM又は費用検証を行ったか。 |
| B | 整備費・財源 | 建設時の市内・県内事業者への発注額・割合、地域雇用効果は把握しているか。 |
| A | 年間運営費 | 令和6年度のシリウス単体の指定管理料相当額を、7施設合算から分離して提示できるか。 |
| A | 年間運営費 | シリウス単体の利用料金、事業収入、駐車場収入、協賛金等はいくらか。 |
| A | 年間運営費 | シリウス単体の人件費、事業費、事務費、維持管理費、修繕費はいくらか。 |
| A | 年間運営費 | 共通人件費・本部費・システム費等を7施設へ配賦する基準は何か。 |
| A | 年間運営費 | 令和6年度のシリウスの電気・ガス・水道費と、開館以来の推移、㎡当たり・来館者当たり使用量はいくらか。 |
| A | 年間運営費 | 指定管理料に含まれない市直接負担(光熱水、大規模修繕、保険、管理組合費等)の年間総額はいくらか。 |
| A | 年間運営費 | 開館から現在までの大規模修繕・設備更新の年度別実績と今後30年の長期修繕計画はいくらか。 |
| B | 年間運営費 | 施設別の損益を経営判断・市評価にどのように使用しているか。公開しない理由があれば何か。 |
| B | 年間運営費 | 利用料金制による増収分、利益、赤字の取扱いと、指定管理料見直しへの反映方法は何か。 |
| A | 指定管理 | 6社の役割、雇用人数、正規・非正規、常勤換算、専門資格者、賃金水準を施設別に確認したい。 |
| A | 指定管理 | 統括責任者と各館長の権限、事故・苦情・予算・事業変更の決裁経路はどうなっているか。 |
| B | 指定管理 | 共同事業体6社間の費用負担、利益配分、責任分担はどのように定めているか。 |
| A | 指定管理 | 次期公募が1団体応募となった要因を市はどう分析しているか。市場対話や公募条件見直しを行ったか。 |
| B | 指定管理 | 指定管理者交代を想定したデータ・職員・システム・ノウハウの引継ぎ計画はあるか。 |
| B | 指定管理 | 外部委託・再委託の範囲、地元事業者への発注額・割合はどの程度か。 |
| A | 利用実績 | 来館者数のカウント方法、重複カウント、開館日数、年度別推移を確認したい。 |
| A | 利用実績 | 利用者の年代、市内・市外、来館目的、交通手段、滞在時間、リピート率の調査結果はあるか。 |
| A | 利用実績 | ホール稼働率94%の算定方法(日・区分・時間)と、メイン・サブ・ギャラリー別の値は何か。 |
| B | 利用実績 | 予約申込数、落選・利用できなかった件数、キャンセル、学校・市主催優先枠を確認したい。 |
| B | 利用実績 | 読書室・交流席の時間帯別混雑率と、席不足への改善策は何か。 |
| B | 利用実績 | 屋内こども広場の年齢、居住地、リピート、相談・福祉支援への接続実績はあるか。 |
| A | 周辺波及 | 現地説明の「周辺人流約4割増」の調査名、地点、年度、実数、調査手法を確認したい。 |
| B | 周辺波及 | 開館前後の空き店舗、地価、店舗売上、歩行者、滞在時間、治安等の変化を分析したか。 |
| B | 周辺波及 | 施設利用者の周辺消費額、イベント時の宿泊・飲食・交通効果を調査したか。 |
| B | 周辺波及 | イベント観光協会が施設内に入ることによる事業連携、フィルムコミッション、地元調達実績は何か。 |
| A | 設計・運営 | 計画時に全国施設を調査した比較資料、運営要求水準、改善反映一覧を提供できるか。 |
| B | 設計・運営 | 全館図書館、会話・飲食許容、自動貸出・返却による効果とトラブル件数はどうか。 |
| B | 設計・運営 | エレベーター、トイレ、授乳、ストレッチャー、搬入、避難動線の運用上の課題は何か。 |
| C | 設計・運営 | 地下駐車場の正確な台数、満車率、周辺駐車場連携、公共交通利用促進策は何か。 |
| C | 設計・運営 | スタジオ、サブホール、会議室等の料金設定根拠、原価、近隣比較を確認したい。 |
| A | 防災・継続 | 災害時の施設役割、帰宅困難者、停電・断水、非常用電源、備蓄、指定管理者の役割分担は何か。 |
| B | 防災・継続 | 感染症流行時の休館、料金、雇用、指定管理料、事業継続のリスク分担はどうしたか。 |
| A | 評価 | 市の年度評価で、来館者以外の文化・学習・健康・子育て・孤立防止の成果をどう測っているか。 |
| B | 評価 | 利用者満足度84%の設問、回答数、属性、未回答、改善反映を確認したい。 |
| B | 評価 | 第三者評価、監査、議会報告、市民参加の仕組みはどの程度機能しているか。 |
第12章 議会・委員会での確認論点
12-1 政策判断に関する質問案
1. 総合体育館の優先整備を決定する際、文化会館、図書館、生涯学習センター、子どもの居場所を含む公共施設横断の比較を実施したのか。
2. 候補地決定前に、単独型、複合型、同一敷地別棟型、二拠点ネットワーク型のLCC比較を実施する考えはあるか。
3. 総合体育館の想定機能に、予約不要の交流・学習、子どもの年齢別居場所、健康相談、地域図書、観光・大会支援を盛り込む考えはあるか。
4. 文化会館等の更新時期を見据え、共用できる駐車場、会議室、管理、広場、エネルギー、防災設備を整理しているか。
5. 建設費85.5~149.3億円に加え、50年間の運営、光熱、修繕、更新、解体まで含むLCCをいつ示すのか。
6. 市民1人当たり負担、将来世代の市債償還、基金残高への影響を複数シナリオで示す考えはあるか。
7. 事業手法の選択に際し、市内企業の受注・雇用機会とVFMをどのように両立するのか。
8. 指定管理を想定する場合、施設別会計、光熱水費、修繕区分、需要リスク、KPIをどの段階で設計するのか。
9. 利用者数だけでなく、健康、子育て、学習、孤立防止、防災、地域消費の成果指標を基本計画に設定する考えはあるか。
10. 子ども、若者、子育て世帯、障がい者、文化団体、スポーツ団体、地域、事業者が計画段階から参加する仕組みをどう設けるのか。
12-2 財政・運営に関する資料要求案
- 既存農業者トレーニングセンターの施設別収支、光熱水費、修繕費、指定管理料、利用料金収入の10年推移。
- 文化会館、図書館、生涯学習センター、スポーツ施設の建築・改修・更新時期、LCC、利用、コストを並べた一覧。
- 新総合体育館の建設費内訳、物価上昇シナリオ、用地費、造成、外構、備品、設計、監理、予備費、解体費。
- 従来、DB、DBO、PFIのVFM、事業期間、金利、リスク、市内企業参画の比較。
- 指定管理又は運営委託の事業者サウンディング結果と参入可能事業者数。
- 新施設の年間運営費、光熱水費、修繕・更新積立相当額、料金収入の試算。
12-3 視察を踏まえた最終所見
シリウスから得られる最大の教訓は、「豪華な複合施設を建てれば人が来る」ということではない。日常利用へ核を置き、子ども、文化、学習、健康、交流を運営でつなぎ、専門企業と行政が継続的に改善する仕組みを設計したことにある。
筑紫野市では、総合体育館整備の緊急性と必要性を前提にしながらも、今後30~50年の公共施設再編の入口として捉えるべきである。体育館か文化会館かを二者択一にするのではなく、何を同じ建物に入れ、何を近接させ、何を別拠点のまま一体運営するかを比較し、市民が日常的に使い続けられる公共拠点を構想する必要がある。
| 本報告書の提案結論現段階では「B:スポーツ+日常生活拠点型」を基本計画の比較案に加え、中長期には「C:文化・図書・学習拠点との二拠点・ネットワーク型」を公共施設等総合管理計画と第8次総合計画へ位置付けることを提案する。 |
資料編1 大和市への追加照会文案
件名:大和市文化創造拠点シリウスの整備費及び指定管理運営に関する追加照会について
大和市ご担当者様
先般の行政視察では、文化創造拠点シリウスの整備経過、施設機能及び運営について丁寧にご説明いただき、誠にありがとうございました。筑紫野市における総合体育館整備及び公共施設再編の検討資料とするため、可能な範囲で下記事項をご教示又は関係資料をご提供いただけますと幸いです。
なお、既に公表されている資料がある場合は、資料名又は掲載先をご案内いただく形でも差し支えございません。
記
1. 再開発事業全体の最終総事業費と、その対象範囲は何か。
2. 公共施設部分(シリウス)の床取得費、内装・設備・什器・図書・ICTの各金額はいくらか。
3. 現地説明の「65億円」「148億円」「213億円」は、それぞれ何を指すか。年度・税込/税抜を含めて確認したい。
4. 国庫補助、県補助、市債、一般財源、基金、権利床・保留床処分金の内訳はいくらか。
5. 市の実質的な一般財源負担と、市債の発行額・償還期間・現在残高はいくらか。
6. 令和6年度のシリウス単体の指定管理料相当額を、7施設合算から分離して提示できるか。
7. シリウス単体の利用料金、事業収入、駐車場収入、協賛金等はいくらか。
8. シリウス単体の人件費、事業費、事務費、維持管理費、修繕費はいくらか。
9. 共通人件費・本部費・システム費等を7施設へ配賦する基準は何か。
10. 令和6年度のシリウスの電気・ガス・水道費と、開館以来の推移、㎡当たり・来館者当たり使用量はいくらか。
11. 指定管理料に含まれない市直接負担(光熱水、大規模修繕、保険、管理組合費等)の年間総額はいくらか。
12. 開館から現在までの大規模修繕・設備更新の年度別実績と今後30年の長期修繕計画はいくらか。
13. 6社の役割、雇用人数、正規・非正規、常勤換算、専門資格者、賃金水準を施設別に確認したい。
14. 統括責任者と各館長の権限、事故・苦情・予算・事業変更の決裁経路はどうなっているか。
15. 次期公募が1団体応募となった要因を市はどう分析しているか。市場対話や公募条件見直しを行ったか。
16. 来館者数のカウント方法、重複カウント、開館日数、年度別推移を確認したい。
17. 利用者の年代、市内・市外、来館目的、交通手段、滞在時間、リピート率の調査結果はあるか。
18. ホール稼働率94%の算定方法(日・区分・時間)と、メイン・サブ・ギャラリー別の値は何か。
19. 現地説明の「周辺人流約4割増」の調査名、地点、年度、実数、調査手法を確認したい。
20. 計画時に全国施設を調査した比較資料、運営要求水準、改善反映一覧を提供できるか。
21. 災害時の施設役割、帰宅困難者、停電・断水、非常用電源、備蓄、指定管理者の役割分担は何か。
22. 市の年度評価で、来館者以外の文化・学習・健康・子育て・孤立防止の成果をどう測っているか。
以上
筑紫野市議会議員 春口あかね
資料編2 主要数値一覧
| 対象 | 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|---|
| シリウス | 開館 | 2016年11月3日 | [Y1] |
| シリウス | 敷地 | 9,378.19㎡ | [Y1] |
| シリウス | 文化創造拠点部分 | 22,759.34㎡ | [Y1] |
| シリウス | 令和6年度来館者 | 2,939,216人 | [Y2] |
| シリウス | ホール稼働率 | 94% | [Y2] |
| シリウス | 屋内こども広場 | 179,016人 | [Y2] |
| 7施設合算 | 令和6年度指定管理料 | 1,072,008,739円 | [Y2] |
| 7施設合算 | 令和6年度収入合計 | 1,295,399,466円 | [Y2] |
| 7施設合算 | 令和6年度支出合計 | 1,295,541,386円 | [Y2] |
| 7施設合算 | 次期5年上限 | 5,489,632,000円 | [Y3] |
| 筑紫野市 | 公共建築物 | 129施設・345棟・226,184㎡ | [C2] |
| 筑紫野市 | 築30年以上 | 延床面積の52.9% | [C2] |
| 現体育館 | 延床・築年 | 2,895㎡・1982年建築 | [C1] |
| 現体育館 | 大規模改修 | 11.70億円 | [C1] |
| 現体育館 | 空調追加 | 2.11億円 | [C1] |
| 新体育館構想 | 延床 | 約10,000㎡ | [C1] |
| 新体育館構想 | 用地含む概算 | 85.5~149.3億円 | [C1] |
資料編3 現地配布資料(抜粋)

1階 芸術文化ホール・ギャラリー等 出典:現地配布資料 [V1]

6階 生涯学習センター・市民交流スペース等 出典:現地配布資料 [V1]
資料編4 出典一覧
【大和市・指定管理者】
[Y1] 大和市「指定管理者による文化創造拠点等の運営について」(更新2025年11月5日) 公式資料を開く
[Y2] 大和市「令和6年度大和市文化創造拠点等指定管理事業報告概要及び評価」(令和6年度) 公式資料を開く 収支は7施設合算
[Y3] 大和市「大和市文化創造拠点等指定管理者募集要項」(令和7年) 公式資料を開く 指定期間:令和8~12年度
[Y4] 大和市「大和市文化創造拠点等指定管理業務仕様書」(令和7年) 公式資料を開く
[Y5] 大和市「これまでの経過」(更新2025年2月3日) 公式資料を開く
[Y6] 指定管理者 やまとみらい「シリウスについて」(確認2026年7月26日) 公式資料を開く
[Y7] 大和市「文化創造拠点等の次期指定管理者選定結果について」(令和7年) 公式資料を開く 応募1団体
【筑紫野市】
[C1] 筑紫野市「筑紫野市スポーツ施設整備基本構想」(策定2025年11月) 公式資料を開く
[C2] 筑紫野市「筑紫野市公共施設等総合管理計画(改訂版)」(2026年3月公表) 公式資料を開く
[C3] 筑紫野市「生涯学習センター施設案内」(確認2026年7月26日) 公式資料を開く
【現地資料】
[V1] 大和市文化創造拠点シリウス現地配布パンフレット、施設利用料金表、現地説明・館内見学音声メモ(令和8年7月)。本報告書掲載写真は視察時に受領・撮影した資料。
| 出典の読み方本文中の [Y] は大和市・指定管理者、[C] は筑紫野市、[V] は現地資料を示す。現地説明と公式資料が一致しない、又は定義が不明な数値は「追加照会必要」として分離している。 |
― 以上 ―