活動履歴

スポーツ施設整備基本構想(案)と公共施設再編から見える筑紫野市のこれから

はじめに:いま、筑紫野市で始まっている「大きな議論の入口」

「こども館(複合施設)+公園」を優先して考えませんか?

私は、筑紫野市議会 文教福祉委員会の副委員長として、

子ども・教育・福祉・生涯スポーツに関わる案件を日々扱っています。

いま、市では

「筑紫野市スポーツ施設整備基本構想(案)」

が示され、

その中で「新しい総合体育館をどうするか」が議論のスタートラインに立っています。

ここで大事なのは、

  • まだ 「構想段階」 であること
  • だからこそ “今なら” 方向性を柔軟に考え直せる ということ

です。

私は、このタイミングで一度立ち止まり、

「本当に“今、一番優先すべき公共施設”は何なのか?」

を、市民のみなさんと一緒に考えたいと思っています。

そのための材料として、

このnoteを書いています。

第1章 筑紫野市の現状:公共施設の老朽化と財政の制約

まず前提として、

「私たちのまちの体力(財政)」と「建物たちの年齢」 の話を

避けて通ることはできません。

■ 40年間で約926億円の「足りないお金」

筑紫野市公共施設等総合管理計画では、

これから40年間を見通したとき、

今ある公共施設を更新・維持していくだけでも

約 926億円 の財源不足

になると試算されています。

つまり、

  • 今ある建物を全部そのままの数で
  • 同じように建て替え続ける

というやり方は、

もう現実的ではありません。

■ 一斉に“歳をとっている”公共施設たち

さらにやっかいなのは、

古くなっている建物が、ほぼ同じタイミングで更新期に来ている ことです。

たとえば、

  • 文化会館
  • 生涯学習センター
  • 農業者トレーニングセンター(体育館)

などは、いずれも1980年代の建設で、

築40年前後になっています。

農業者トレーニングセンターについては、

  • 劣化状況は「広範囲に劣化(Cランク)」
  • 10年以内に大規模改修が必要
  • 改修費の概算は約11.7億円+空調の追加費用

と見込まれています。

これは、「どこか1つだけ特別に悪い」という話ではなく、

“同じ世代の建物”が一斉に大規模な手入れを必要としている 状態です。

■ この状況で「新しい大型施設」をどう考えるか

こうした中で、

「新しい総合体育館を(将来的に)整備したい」

という構想が、スポーツ施設整備基本構想(案)の中で示されています。

この案では、

用地取得と建設費を合わせて

概ね 136〜149億円規模

という大きな投資になることが想定されています。

ここで、誰が見ても浮かぶ疑問があるはずです。

「すでに施設の更新費だけで 926 億円足りないのに、

さらに100億円を超える新規投資をする余裕が、本当にあるのだろうか?」

私は、この問いをきちんと立てた上で、

対立ではなく「よりよい選択肢」を一緒に探りたいと思っています。

第2章 スポーツのまちづくりと「誰がどこで動いているか」のリアル

「スポーツのまちづくり」という言葉は、

とても聞こえが良く、私も方向性としては賛同します。

ただし、政策として考えるときに重要なのは、

「市民が実際に、どこで・どんな運動をしているか?」

という現実です。

■ アンケートで見える“生涯スポーツの主役”

市が実施したスポーツに関するアンケートでは、

市民が「これからやってみたい」と答えた種目として、

  • ウォーキング・散歩
  • ランニング・ジョギング
  • 体操(ラジオ体操・健康体操)
  • 自転車・サイクリング
  • 登山・ハイキング

などが上位を占めています。

これらの共通点は、

「体育館がなくても実施できる」

「むしろ公園や遊歩道の方がやりやすい」

ということです。

体育館が必要な競技(バレーボール、バスケットボール、バドミントンなど)も

もちろん大切ですが、

“市民全体” で見ると、多くの人が求めているのは

「身近な場所で、気軽に身体を動かせる環境」

だということが見えてきます。

■ 体育館の役割は「必要だが、全員の主役ではない」

体育館は、

  • 競技スポーツ
  • 大会開催
  • 雨天時の活動場所

などの重要な役割を担います。

一方で、

  • 予約が必要
  • 利用時間が限られている
  • 種目が限定される

という特徴もあり、

「毎日の運動習慣の受け皿」として使える人は限られます。

ここで、

「体育館が不要」と言っているわけではありません。

そうではなく、

“限られた予算の中で、優先順位をどうつけるか”

という問題です。

第3章 全国で広がる「こども館(複合施設)+公園」という選択肢

私は文教福祉委員会として、

全国の先進事例をいくつか視察してきました。

その中で強く印象に残ったのが、

「こども館(複合施設)+広場・公園」

というモデルです。

代表的な3つの事例を紹介します。

① 栃木県 大田原市「子ども未来館」

  • 年間利用者は約10万6千人
  • そのうち市外利用が7割
  • 一時預かり機能があり、保護者の “自分時間” の確保にも役立っている
  • まちなかの再開発と一体で整備され、商業・交流とも結びついている

ここでは、

「子育て支援」と「まちなかのにぎわい」が

一つの建物を通じて連動している

というのがポイントです。

② 東京都 国立市「矢川プラス」

  • コンセプトは「まちなかの大きな家と庭」
  • 0〜18歳の子ども・若者の居場所
  • 高校生のスタディコーナーは、試験前に満席になるほど
  • 屋外の広場は、子どもの遊び場であり、高齢者のちょっとした運動の場でもある

この施設では、

「勉強する場所がない」

「放課後行くところがない」

という若者の声に応える役割も担っています。

③ 栃木県 真岡市「monaca(モナカ)」

  • 図書館+子育て支援センター+地域交流センターが一体
  • 屋上には大きなトランポリン型の遊具
  • 開館後、年間来館者数が13万人 → 36万人に増加
  • “まちの第三の居場所(3rdプレイス)”として機能

monaca は、

「図書館だけ」

「子育て施設だけ」

「交流センターだけ」

という単体整備では得られなかった効果を、

複合化によって大きく引き出している事例です。

■ 共通しているのは「多世代が混ざる設計」

これら3つの事例に共通しているのは、

  • 子ども
  • 若者
  • 保護者
  • 高齢者
  • 市民活動団体

などが、同じ建物と広場を共有している ことです。

「こども館」と言っても、

子どもだけのための建物ではなく、

子どもを中心に、多世代がつながる“まちのリビング・まちの縁側”

のような存在になっています。

そして、その“外”にはかならず 公園や広場 があり、

そこで生涯スポーツにつながる軽い運動や、

健康づくりの活動が行われています。

第4章 こども館の建設費をシミュレーションしてみる

「体育館よりこども館の方が安い」と言っても、

具体的な金額イメージがないとピンと来ないかもしれません。

そこで、

他市の事例や一般的な建築単価をもとに、

筑紫野版こども館(複合施設)の建設費をざっくり試算してみます。

■ 1㎡あたりの建築単価

最近の複合公共施設の単価は、

設備や仕様にもよりますが、

1㎡あたり 45〜60万円程度

で見ておくのが現実的です。

真岡市 monaca は、

約7,000㎡で42.5億円とされています。

単純計算で1㎡あたり約60万円前後です。

■ 筑紫野版こども館の規模感

筑紫野市で想定したい機能は、

  • 子育て支援(ひろば・一時預かり・相談室)
  • 青少年の学習スペース
  • 図書・自習・静かな学びの場
  • 市民活動・生涯学習の小講座室
  • 多世代交流スペース
  • 福祉相談

などです。

これらを合わせると、

延床 4,000〜5,000㎡程度 が一つの目安になります。

■ 建設費の目安

延床4,000〜5,000㎡ × 45〜60万円/㎡ で計算すると、

  • 約18億〜30億円程度(建物本体)

となります。

外構工事、公園整備、設計監理費、家具・遊具・備品などを含めると

もう少し増えますが、

それでも体育館構想で見込まれている

約136〜149億円

と比べると、

2割前後の投資額で済む

という規模感です。

第5章 こども館は「公共施設再編の解決策」になりうる

こども館は、新しい箱物を増やすだけでは意味がありません。

むしろ重要なのは、

「老朽施設をどう“整理・統合”していくか」

という視点です。

■ 統合できる機能のイメージ

こども館(複合施設)は、

  • 生涯学習センターの中小規模講座室
  • 子育て支援拠点
  • 青少年の学習スペース
  • 市民活動室
  • 多世代交流室
  • 一部の相談窓口

といった機能を“受け皿”として引き受けることができます。

それにより、

  • 生涯学習センターは必要最小限の施設に縮小
  • 文化会館の小規模機能を移転し、大ホール中心へ整理
  • 子育て拠点の分散を解消し、財政・人員配置を効率化

といった「再編」が現実味を帯びてきます。

■ 「建て増し」ではなく「整理しながらつくる」発想

これからのまちづくりで大切なのは、

「新しい施設を増やす」ことではなく、

「機能を整理しながら、必要な拠点に集約する」こと

だと思います。

こども館はその“集約の核”になり得る存在です。

体育館はどうしても「単機能」の面が強くなりますが、

こども館は、

  • 子ども
  • 若者
  • 大人
  • 高齢者

の多様なニーズを、

1つの投資でカバーできるという強みがあります。

第6章 では、体育館構想とどう向き合うべきか?

ここまで書いてきたことは、

「体育館はダメだ」「こども館だけが正義だ」

と言いたいわけではありません。

体育館は体育館で、

  • 競技スポーツの場
  • 大会の開催
  • 避難所機能

など、重要な役割があります。

問題は、

「今の財政状況・老朽施設の更新状況を踏まえて、

どのタイミングで、どの規模の施設を優先するのが妥当か?」

という順番の話です。

■ 今はまだ「構想段階」だからこそできること

スポーツ施設整備基本構想は、現時点では「案」の段階です。

これはある意味で、

“柔軟に見直せる貴重なタイミング” でもあります。

  • 体育館の規模・内容を再検討する
  • 農業者トレーニングセンターの建替えや改修との関係性を整理する
  • 公共施設全体の再編の中で位置づけ直す

そして何より、

「こども館(複合施設)+公園」という別の選択肢も、

同じ土俵に載せて比較検討する

ことが、今なら可能です。

第7章 文教福祉委員会の一員として、私が提案したいこと

文教福祉委員会は、

  • 子ども・子育て
  • 学校教育・社会教育
  • 生涯学習
  • 福祉・健康
  • 生涯スポーツ

などを扱う委員会です。

私は、その副委員長として、

次のような方向性で議論を深めていきたいと考えています。

■ 提案1:体育館構想の「財政的・機能的な妥当性」を冷静に検証すること

  • 公共施設更新不足(926億円)との整合性
  • 文化会館・生涯学習センター・農トレ等の改修時期との重なり
  • 将来の維持管理費の見通し

感情ではなく、「数字」と「計画」で検証する必要があります。

■ 提案2:「こども館(複合施設)+公園整備」を正式な比較対象として位置づけること

  • 延床4,000〜5,000㎡、建設費20〜30億円の複合拠点
  • 子育て支援・青少年・生涯学習・相談・交流の一体化
  • 公園と連携した生涯スポーツ環境の整備

これを「公共施設再編の核」として検討し、

体育館構想と比較する形で議論することが、

市民にとって一番わかりやすいと思います。

■ 提案3:市民の声をきちんと聞きながら進めること

「体育館がほしいか、こども館がいいか」という二択ではなく、

  • 日常的にどんな場所が足りないと感じているか
  • 子育て世代が一番助かるのはどんな施設か
  • 若者はどこで勉強したいか
  • 高齢者が通いやすい場所はどこか

こうしたリアルな声を、

アンケート・意見交換会・対話の場を通じて

丁寧に拾っていくことが必要だと考えています。

第8章 おわりに:「どの施設をつくるか」は、「どんな未来を選ぶか」

最後に、少しだけ“価値観”の話をさせてください。

公共施設整備は、

単なる「箱物論争」ではなく、

「どんな暮らしを、

どの世代に、

どんな形で保障するか」

という、まちの価値観そのものの選択だと思っています。

■ 子どもに、どんな環境を残したいか

■ 若者に、どんな学びの場を用意したいか

■ 高齢者に、どんな居場所と運動の機会を保障したいか

そして、

そのために「限られたお金」を

どこに、どの順番で使うのか。

体育館構想が「案」の段階にある今こそ、

私は、市民のみなさんと一緒に

この問いを真正面から考えたいと思っています。

このnoteが、

「体育館か、こども館か」という単純な二元論ではなく、

「私たちのまちの未来をどう描くか」

を考えるための材料になれば、とてもうれしいです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

© 2023 春口あかね